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誰がために 7
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「弟を利用して顔がいい人に媚び売ってる。
ブサイク。
性格悪い。
不倫の子。
挙句に遊び人で淫乱」
でしょう?と笑って言ったのは俺の方。
目の前の冬樹さんは驚いたように目を瞬く。
「別にこの学校だけじゃないですし、あんまり気にしてないです」
小学校の時も、中学の時も薫といれば嫉妬した周りが好きなように言ってくる。
それを否定したって悪化するだけだし、それは嘘偽りばかりなのだから俺は堂々としていればいいと、気づいた。
それに、それだけ言われるということは、薫が目立っているという証だから。
「……人を偏見の目で見るわけじゃなかったけど、やっぱりどんな人なのかなとは思ってたんだよね。
颯佑もかっこいい方だと思うけど媚びなんて売ってないし、ブサイクどころか寝顔可愛かったし、颯佑に弁当まで作ってる君が性格悪いはずないよね。てかいい子でしょ」
「え、いや、それは…褒めすぎです」
そこまで言われると思ってなくて、思わず赤くなった顔を隠すように深く俯いた。
「そんなうぶな反応して遊んでるわけないし」
噂は所詮噂なんだね、と笑った冬樹さんにこの人はちゃんと人を見れる人だと思った。
ていうか、神凪はどうなんだ。
知らなかった、はずないし。
けれど軽蔑するような反応をするわけでもなく。
何を考えているのか、わからない。
「颯佑は噂なんて信じないからね」
俺の考えていることがわかったのだろうか、フォローするように言われた言葉になんとなく安堵した。
「ていうか、噂を信じるほど人に関心ないし」
クラスでも浮いてて困るよと。
「神凪は人気だろうな」
「え、なんで?」
「クールな奴、流行ってるだろ?」
「……んー颯佑はクールっていうよりただの面倒くさがりかな。
けど1つにハマったらなかなか抜けないんだよ」
「そうなの?」
確かめるように神凪の方を向いて尋ねれば、こっちを見ていた神凪と目があった。
「人からどう思われるかとか、どうでもいい」
神凪が言ったのは、それだけ。
無口、無表情、無頓着、無関心。
なんとなく、ふと思った。
「神凪の、笑ってるところ見たい、かも」
それは思っただけにとどまらず口から音として発していた。
「…………」
それには何も反応しない神凪に、
「颯佑の笑ったところかぁ…俺も見たことないかも」
指を顎に当て思い起こすように言った冬樹さん。
それだけで神凪の笑顔がレアなものだとわかる。
「笑うどころか、その他の表情もほぼ見たことないなぁ」
というか表情を変えること自体が相当難しそうだ。
「なにしたら笑ってくれる?」
そう尋ねても、当の本人はさぁと首をかしげるだけだ。
この人に無関心な神凪はなぜ俺と弁当なんて食べてくれるのだろうか。
一体神凪はなにを思って俺と一緒にいるのだろうか。
いや逆になにも思っていないのだろうか。
なんにせよ、神凪と一緒にいるこの時間が居心地が悪くないというのは正直なところでもある。
「あぁ、そういえば薫くん」
聞こえてきたのは冬樹さんのそんな言葉。
「夏樹と付き合ってるらしいね」
それは、きっと音。
俺と神凪の関係が変わりはじめる、音。
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