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誰がために 13
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授業が始まり、校舎内は静まり返った。
外を見ても、ちょうど体育がない時間なのだろう、広いグラウンドには誰もいない。
そんな静寂の中でモグモグと2人だけ口を動かす。
「んで、なんでお前いなかったの?」
「………呼び出し」
「先生?」
「さぁ」
「さぁって…」
呼び出されて知らないなんてことあるのだろうか。
なんかやらかしたのか?
いや、うん…。やりそう。
神凪はなんの悪気もなくとんでもないことやりそう。
「なんかあったら先生とかに言えよな?
喧嘩とかそういうのはだ…」
「告白」
「うん?」
「告白された」
遮られた言葉の意味を掴みかねた。
頼むから、もうちょっと詳しく言って神凪…。
「知らない奴に呼び出されて、好きだから付き合ってだと」
顔に出ていたのだろうか、そう神凪が付け足した。
まぁ、神凪はモテるよな。
「で、OKした?」
「するわけないだろ」
「なんでまた。せっかくお前のこと好きって言ってくれてるのに」
「めんどくさい」
あいも変わらずそう言い放った神凪に思わず苦笑いを零した。
そのいつも通りさにどこかで小さく安堵した。
ーん?
「あれ、」
「なに」
安堵って、なんだ?
「いや、なんでもない、けど…」
自分の中のその疑問に首をかしげるも、まぁいいかと流してしまった。
「神凪ってさー、好きな奴いんの?」
これは面白半分興味半分。
食べ終えた弁当箱を閉め、頬杖をつき笑いながらそう尋ねた。
「……………なんで」
訝しげに睨んでくるからまたなんとなく面白い。
「面白そう」
「からかってるのか」
「まさか」
なんかさ、
「神凪ってこう、なに考えてるかわかんないしその上口下手だけどさ。大事にしてくれそうっていうか」
「なんだそれ」
「一途っぽい?」
「疑問かよ」
ちゃっかりしてるよまったく。
授業をサボっての2人だけの密会は、少しの罪悪感と緊張と、暖かさで溢れていた。
「神凪に惚れられた奴は幸せなんだろうな」
「さっきからなに言ってんだ」
「俺もそう思う」
なんでこんなこと神凪に話すのかなんてわからない。
けれど、ただ言いたかったのだ。
知らせたかったのだ。
神凪に貰ってる暖かさを。
俺が感じてるお前の暖かさを。
「神凪に惚れられた奴とか、羨ましい」
「………」
それは俺が惚れられたいってことじゃないつもりだった。
そうじゃないことも、そうならないことも考えなくてもわかること。
「え、なんで黙んの。冗談だって……!」
「、冗談」
「うん、うんうん冗談。惚れられる奴は幸せだなっていうのは本当だけど、」
「………」
うわぁ、やめて本当まじ黙らないで。
口走っちゃっただけなんだって。
「俺は、」
「うん、?」
「普通に嬉しかったけど」
「え?あ、お、おう」
まさか、そんな返しがくるとは思ってもみなかった。
お前は、と神凪は続けた。
「お前は好きな奴にはどんなだろうな」
「俺?俺は、うるさいかもな」
「うるさい?………あぁ、母親みたいなことはいうな」
「母親………薫にも言われるよ」
そこまで言って、俺はクスクスと肩を震わせた。
「ダメだな」
「………何が」
机に右頬をくっつけながら、目の前に置いてある神凪の指を摘んでみた。
「恋バナってやつは、男子の仕事じゃないな」
一瞬ぽかんと惚けた神凪だったが、小さくクッと吹き出した。
「そうだな」
恋バナは男子の仕事じゃない。
けれど、恋をすることは男子女子みんなの仕事だ。
俺も人生初めての恋が最近終わったばかりだけれど、またしたいなっては思う。
思うけれど、今はまだ、いいんだ。
神凪とのこの時間がもうちょっと続けばいい、なんて思ってるんだよ俺は。
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