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君がために 1
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「颯佑悪い遅くなった!」
互いの告白からもう1年が経ち、俺はまだあの教室の扉を開けている。
俺らは2人とももう3年になり、世間は受験受験で忙しいのだろうが、俺らの高校は小中高大と一貫校だから一定の成績を満たしていればその心配はいらない。
かくいう俺もその1人で、平均少し上くらいな俺はまぁ進級できると思ってるわけだ。
「はぁーっ、疲れた」
走ってきたせいで乱れた息を整えながらガタンっと変わらない席に腰を下ろす。
「………」
「あ、大丈夫だよ」
チラリ、と俺を見た颯佑の目は大丈夫かと言っていた。
あれから1年も経てばまぁだいたい颯佑がどんなこと思ってるかは自然とわかるようになってきた。
そしてそれに比例して、言わなくてもわかるからか、颯佑はもっと喋らなくなるし。
ちなみに俺と颯佑とは所謂、こ、恋人、というやつなのか、付き合っている。
その関係を知っているのは冬樹さんだけだと思う。
薫には、言っていない。
言えていないっていうのが正しいかもしれない。
「………誰」
誰かから呼び出されたのか、と聞きたいらしい。
「先生だよ。なんか雑用押し付けられた」
「お疲れ」
「ありがとー」
机に突っ伏すると、ふわっと頭を撫でられる感触。
颯佑って、触るっていうより撫でるのが好きらしい。
なんというか、1年は経ったが、体を重ねることもキスをすることもない。会うのも昼休みだけでただ1年前とほぼ変わらないかんじで、端からみればただの友達に見えることだろう。
けど冬樹さん曰く、颯佑の雰囲気が全く違うらしい。
颯佑はどうかわからないけど、一緒にいられるだけで幸せな俺にとっては毎日が幸せすぎて、満たされている。
1年経っても、毎日いても、颯佑の隣は暖かい。
暖かくて、幸せで、それは全くなくなることはない。
「もうほんと、あのゴリマッチョ許さん。
なんで俺ばっか…」
ゴリマッチョは俺らの担任で先ほど俺に雑用を押し付けやがった奴。
しかも先ほどというか毎回のごとく俺をこき使ってくる。
「……………あさ」
いつからか颯佑は俺のことを『あさ』と呼ぶようになった。
そう呼ばれるのは颯佑だけで、特別って感じて嬉しい。
「なんかあったら言え」
まぁ多分これは心配してくれてるんだと思う。
「んー、頼られるのは嫌いじゃない」
「はぁ」
「あはは」
呆れかえってため息を漏らした颯佑に俺は軽く笑ってしまった。
迷惑、心配なんか、多分めちゃくちゃかけてると思うけど、それと同じくらい大事にされてるって気付いたのはだいぶ最近。
「あ、ごめん腹減ったよな。ご飯食べよう」
変わらない緑と紺色の弁当箱。
「「いただきます」」
互いに手を合わせて行う挨拶も当たり前。
「あ、今回の唐揚げ俺ちょっと自信作。
食堂のおばちゃんにね、味付け裏技教えてもらったんだ」
「………うまい」
「っよし!」
少しだけ目を開いてポツリと出た言葉に、これは本心だな、と嬉しさに思わずガッツポーズが出た。
「あ、あとこれ新作。見た目的には良さそうなんだけど……」
「………、………うま、」
「颯佑」
「……微妙」
「だよな」
少しだけかっくりと肩を落とした。
何回味見しても俺も納得がいかなかったからまぁ仕方ないか、と割り切った。
なんやかんや、毎日こんな風に時々冬樹さんもで、穏やかで平和で。
暖かい。
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