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君がために 3
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「、………、」
薫から尋ねられたことに、とっさに答えることができなかった。
どっちが大事、なんて酷な問いだろう。
「うっそだよ!ごめんふざけただけ!」
きゃははっと笑ってごめんね?と首をかしげる薫を見て、小さく安堵の息を吐いた。
ちら、と颯佑も見てもじっと薫を見て何も言わない。
あまりにじっと見てるものだから、
「颯佑……?」
きゅっと颯佑の服の袖をつまんでみた。
我に返ったように俺を見て、なんだ、と目で聞かれる。
「いや、ずっと薫見てるから…」
って待て、なんで弟に嫉妬してるみたいになるんだ。女々しい、女々しいぞ俺。
「なに?もしかして僕に惚れちゃった、颯佑サン?」
「………」
「薫、颯佑を誘うんじゃねぇよ」
夏樹さんがいった一言にギクリとした。
そうだ、今まで颯佑の事も黙ってたということは颯佑との積極的な接点はなかったはず。
ということは、俺を通して会うことは初めてで、俺と薫の違いを知るには十分な回数だ。
容姿、性格、雰囲気。
どちらがいい?って聞かれたら10人が10人中薫と答えるだろう。
むしろ俺は付属品で不良品で欠陥品で、誰も買う人なんていないだろう。
「あさにぃなんてやめて僕にする?」
「………、」
なんてことを言うんだって思ったけれど、これで颯佑がどう答えようが俺にはその決定権も口出しする権利もない。
「……はぁ」
小さくため息を吐いたのは颯佑だった。
「全く違うな」
なにがなにと、なんて言わなくても俺にはわかった。
薫と俺だ。
どちらだろう。全く違う俺と薫で颯佑はどちらがいいと思ったのだろう。
それになんで夏樹先輩は薫に対してなにも言わないのだろう。自分の恋人が他の人を誘っているというのに、怒ったりしないのだろうか。
「颯佑が僕のこと好きになるなら僕も颯佑の事好きになるよ?」
「薫……っ!」
お願い。
頼むから、颯佑を取らないで。
もうこれ以上俺からとっていくなよ薫。
颯佑だけなんだ。
颯佑の隣は暖かくて俺まで暖かくなって、もう、
もう、自分から離れることなんてできないんだ。
募った寂しさは1人じゃないとわかった瞬間に、手を差し伸べられて掴んだ瞬間に溢れ出す。
寂しくないから、またその寂しさを味わいたくなくて離したくなくなる。
けれどでもあんまり手を離さなかったら嫌われそうで、それが怖くてなにも言えない。
「えー、薫が颯佑にするならオニーサンは俺にしとく?」
「なっ、」
夏樹先輩の口からでた言葉に衝撃を受けて、言葉を失った。
なんで、なんで。
「あさ」
「そ、すけ…」
「夏樹さんがいい?」
こいつはまだ俺が夏樹先輩のことを想っているって……
「んなわけあるかアホ!」
そう叫んだ俺にフッと小さく颯佑は笑った。
「あぁ俺もだ」
「よかったね、あさにぃ。ラブラブだね!」
「か、からかうなよ薫!」
薫の考えがわからない。
祝ってくれてると思うのに、この取れない胸騒ぎはなんだろう。
颯佑の手をとって、可愛く行かないで、なんて言えたら楽になるのだろうか。
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