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君がために 9
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「え、休み……?」
「うん、今日は、一応」
薫が大事をとって学校を休もうとなったことを知ったのは、今日の朝。
もう俺が制服に着替えて弁当もカバンに入れて、そのまま薫の部屋に来た時。
「そ、っか、……わかった、ゆっくり休めよ」
薫が休みならば今日は俺1人で学校か、とカバンを肩に掛け直し薫の部屋から出ようとすると、控えめな声が背中を追ってきた。
「………あ、さにぃ……」
「ん?」
どうした、と足を止めて振り返れば話、布団を握りしめてうつむきながら
「学校、行かないで」
そういった。
まぁ別に、学校くらい一日二日休んだところで変わらないけれど、俺の頭にあるのは颯佑のこと。
詳しくは颯佑の弁当のことだった。
俺が行かなきゃ今日の颯佑の昼ごはんがなくなってしまう。
購買……は、あるんだけどすぐ行かないと売り切れるし。
絶対昼休み俺が来るまで待ってると思うし。
「ごめん薫、」
「行かないで!、今日だけでいいから、お願い一緒にいて。……僕、こっ、怖くて…」
震えた声に、少しだけ息を吐き出しカバンを投げ、ストンっと薫のベットに腰を下ろした。
「………あさにぃ」
「……何食べたい?」
「え、……」
「昼ごはん、好きなもの作ってやるから」
「………っと、じゃあ、オムライス」
「わかった」
するりと薫の頭を撫でる。
その下から不安そうな薫の目が覗いた。
「……あさにぃ、ごめんね、学校……」
「いいよ、薫の方が心配だから」
怖いと、薫は言った。
だってそれは、怖い思いをさせたのは俺のせいだから、いなくちゃいけないと思った。
「着替えてくるな」
そう言い残して部屋に戻り、携帯を開く。
『悪い颯佑、今日は薫と一緒に休むから昼ごはん持ってけない』
それだけ打って、できれば昼前に見て欲しいなと思いながら閉じてネクタイを解いた。
ブブッとなった携帯にびくりと肩が揺れた。
え?もう見た?早くね?
それでも颯佑からだっていうのは嬉しくて、まだボタンを外し途中だったけれど携帯に飛びついた。
『わかった』
それだけだけど。
ちょっと短いなんて思ったけど、でも嬉しかった
「今日は会えると思ったんだけど……」
ブブッ
「わ、また来た?」
『残念だ』
んっと、これはどっちだ?
会えなくて残念?ご飯食べれなくて残念?
けどんなこと聞けるか
『ごめんなー、今日は生姜焼き入れてたんだけど』
『泣いてるのか』
話聞いてるかな颯佑。
てか、泣いてるかってこいつやっぱ絶対俺のこと泣き虫だと思ってるし。
いや、昨日も少し泣いたけど、さ……。
『泣いてません!』
『( T_T)\(^-^ )』
「っぶっ」
これあれか、慰めてる的なやつか。
おのれこのやろう颯佑。嬉しいとか思ったじゃないか。
『寝る』
何て送ろうかと悩んでいると、少し経ってまた携帯がメッセージを受信し震えた。
一言だけ書いてあって、あぁ今あの教室か、なんて机に突っ伏してる颯佑を思い浮かべた。
「会いたいなぁ……」
そう願っても今日ばっかりはどうしようもない。
薫の、そばにいなきゃだから。
『おやすみ』
夜でもないし、もう寝て返事なんて期待してなかったけど、すぐまたかえってきた。
『あぁ』
起きてんじゃん!
少しだけ吹いたことは秘密だ。
また颯佑拗ねるから。
また昼休みくらいになったらメールしてもいいよな?
返ってくるかな。
どうだろうな颯佑だし。
電話は…………さすがに迷惑か。
会えないけど、触れれないけど声を聞けないけど。
こうやって颯佑のことを考えている時が1番心が和む。
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