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思うところ
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頭から降る熱に身を任せ、ため息を吐く。
結局あの後熱のこもった颯佑の視線を無視し風呂を借りた。
さすがに自身の熱は引いたけれど、こう、出してしまったものをそのままというのはやはり気持ち悪いから。
「……はぁ」
愛しい想いと、見えないふりをしている罪悪感。
相反する想いが心を荒らす。
なんだろう、この颯佑を騙しているような感じは。
俺は、俺はちゃんと颯佑の事が好きなのに。
あの時と変わらず、いやあの時よりも離れがたいくらいに愛しくて、大好きなはずなのに。
颯佑が見ているのは今か過去か。
なんだかんだで過去に囚われているのは颯佑の方ではないのだろうか。
それだけ俺はあいつに酷いことをしたと思い知らされる。
けれどそうする事が、この気持ちがどれだけ罪深かったのだとしても、俺はもうあいつの手を離す気は無い。
あいつが、颯佑が今度こそ俺のことを嫌いにならない限り離さないと、離れないと決めたのだ。
ーあさ。
熱のこもった俺を呼ぶ声。
それが全てを物語っていた。
大丈夫、大丈夫。
隣には颯佑がいてくれるから。
どんなことだってできる。
たとえ颯佑が過去を見ていても、俺は過去にだってなってみせる。
さてここで1つ問題が浮上する。
薫だ。
ー颯佑はね、俺の1番大事なものを取ろうとしたんだよ。
いつの日か薫が言っていたその言葉の意味がわかる。
だって薫には俺の意思なんて関係ないから。
俺が望んで颯佑の元へ行っても薫は俺は盗まれたという。
いかにわかる。
ーあさにぃは、俺のーーなんだから。
そう、そうだ。
ずっとずっと昔から。
薫が大事だと思い始めたあの日から。
薫から離れられなくなったあの日から。
俺は、
「薫のオモチャなんだな」
心のどこかで分かっていた。
友達がいないことも、もしかしたら夏樹さんのことも。
俺を薫から離れられなくするための罠。
俺の世界に薫しかいなかったのは、俺が薫だけを望んだからじゃない。
薫がいつからかそうするように作ったのだ、俺の世界を。
分かっていた。心のどこかで分かっていたのだ。
だから薫が大事だという想いの裏で、見えないふりをしてきた俺の中の本当の醜い俺がいつも叫んでいた。
ー俺は、咲田薫が嫌いだ
そしてもう1つ分かった事がある。
ー俺から、もうこれ以上取って行かないでよ…っ
夢の中の幼子は、過去の、あの時の俺だった。
悲しい想いになるのは当然だ。
だってあれは俺なんだから。
いつだって愛される薫を見て、全てをとっていく薫を見て、俺は1人泣いていたのだから。
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