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完璧人間の崩壊(4)
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~ Kousuke’s side ~
力強く腕を掴んで、無理矢理キスをして…その先もしてやろうと思ってた。だけど、僅かに残ってた理性で自分を押さえ込む。
「好きなんだ…。少しの事で、嫉妬で狂うぐらい。」
こんなに誰かを好きになったことなんてない。だから、自分がこんなにも女々しくて、面倒で、束縛するような人間だと思っていなかった。今まで、束縛をされたことはあってもしたことはなく、いつも何で女はこんなにも面倒なんだろうと思っていた。だけど、それは男もそうなんだと気づいた。
「なぁ、逃げずにちゃんと俺を見ろよ。」
「…もう、恋はしたくない。」
それは、光君のせいだろうか。仕事が終わったらすぐに家に帰って、昼休憩の度に電話をして、あんなに尽くしていたのに最後はあっけなかった。結局は、本当に好きにはなってもらえず、挙げ句の果て結婚式にまで呼ばれて…。確かに、そんな事があれば恋をしたくないと思っても仕方がないかもしれない。でも…
「俺と光君は違うだろ。愛してるし、お前の事を養ってやるし、家事だってする、ここでただおかえりって言ってくれるだけで良い…。」
「まだ、立ち直れてないんで。」
「一緒にいたら好きになるかもしれないだろ。だから、一緒に住もう。」
少し涙ぐむ目が、可愛いと思う。自分がこうさせてしまったんだけど。
天野は押しに弱い。人の事に対しては厳しいくせに、自分の事に関しては緩いんだ。細い体を引き寄せ、抱きしめる。
「仕事、本当にここでするんですか。」
「俺的には、そうして欲しい…。」
もう、嫉妬で傷つけたくない。本当は、いつも余裕でいたいし、優しくしたい。それなのに、いつも焦りまくって天野を傷つけて。自分勝手だと思う。
「…荷物、持ってきます。」
「いいのか?」
「まぁ…、ご飯美味しいですし、ベッドの寝心地は良いですし、仕事さえちゃんとやれば楽っちゃ楽ですよね。」
「此処に住みながら、仕事するんだぞ?」
「引き篭もりの自分にとって、家から出なくていいって最高の条件ですよ。」
そうポジティブに発言する天野に、罪悪感と嬉しさ両方押し寄せる。無理にこんな事を言わせているのは理解している。
「…本当、お前は馬鹿だな。」
「喧嘩売ってます?」
何で、お前はこうも幸せになる事が出来ないんだろうな。面倒事にばかり捕まって、自分が辛い思いをして。さっきのキスだって、怒りもしない。…下手したら、その先をしても怒らないんだろうなお前は。もっと、自分の事を大切にした方がいいのに。
「荷物、休みの日に取りに行こう。それまで、俺の服とか使っとけ。」
「あー、そうですね。服を借りても、見る人が居ないから。」
「ぶかぶかだけどな。」
…これ、軟禁みたいなもんだよな。
時計を見れば、10時を回っていて夕飯を食べていないことに気づく。米炊いてないから、パスタか。
「夕飯作るから、先に風呂入ってこいよ。」
「俺はいいですよ。」
「…却下。残してもいいから、少しは食べろ。」
そう言うと、眉間にシワをよせて嫌そうな顔をする。
「そんな顔をしても駄目だ。一口でも良いから食べな。」
「はい。じゃあ、お先に入ってきます。」
「ん、いってらっしゃい。」
…バスルームへ行ったのを確認して、一人ため息を吐く。
「何やってんだろ、俺。最低にも程があるだろ。」
好きな奴に無理矢理キスをして、軟禁状態にして、幸せを奪って。天野は笑っていたけど、きっと心からの笑顔なんかじゃない。無理して笑っているんだと思う。俺に気遣って。自分が辛い思いをしているのに、俺の言う事を聞いて俺に嫌われないようになのか、俺が傷つかないようになのか接して…馬鹿な奴。
でも、俺は光君の時みたいに天野以外の奴を選ぶなんて事はしない。
明日、社員達になんと言おうか。絶対嫌われるだろうし、何かしら悪い方に考えられてしまうだろう。天野から伝えてもらった方が良いか。とりあえず、明日は会社に出社してもらって皆に説明をしてもらい、次の日からはここでの作業。飯塚、何か勘付いてきそうだな。文句も言うだろう。あんなに懐いていたのだから。でも、こうなったのは飯塚のせいでもあるし。飯塚が天野に近づきさえしなかったら、俺はここまで嫉妬はしなかったし、天野を軟禁状態にもしなかっただろう。多少の嫉妬はするだろうけど。
恋って、こんなにも人を狂わせるんだ…。また、笑ってくれる日がくるだろうか。こんな俺を、天野は受け入れてくれるだろうか。
好きになって欲しい。俺みたいに、夢中になってほしい。嫉妬も、束縛もして欲しい。
…突然、消えたりなんかしないよな。好きにならなくても、そばに居てくれるよな。俺、お前に捨てられたらと思うだけで気が狂いそうだ。光君と付き合っていた時、天野もこんな気持ちになったんだろうか。もしそうだとしたら、いつも捨てられる事に不安を感じながら過ごしていたんだろうな。
さっき、天野の腕を強く掴んでいた俺の手が…真っ黒に染まっているような気がして目をそらした。
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