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完璧人間の崩壊(5)
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~ Satuki’s side ~
あんな事をされておいても、怒る気にならなかった自分は可笑しいかもしれないな。でも、自分よりも傷ついた顔をしている三浦さんを見て、平然とした態度でいた方が良いと思った。本当は優しい人なんだ。ただ、俺の行動が悪かっただけなんだ。三浦さんの俺に対する気持ちをわかっていて、あんな態度をとったら…ムカついても仕方ない。
掴まれた手首がまだズキズキと痛み、手形がくっきりと赤く肌に浮かんでいる。元々肌が白いから、余計に目立つな。…平然としていようと思うのに、少しだけ手が震えてるし。
一人になって緊張感が抜けて、お湯と一緒に涙も流れていく。
泣くのは今だけだ。これから、2人の生活が始まるんだから。仕事をするのも、生活をするのもこの家。新しい居場所。俺は、感情が仕事に影響しやすいんだから、仕事には影響を出ないように頑張らないといけない。生活面では、三浦さんが家事をしてくれるというけれど、住まわせてもらう立場なんだから三浦さんと比べると劣るかもしれないけれど俺が家事をしないと。養うとも言っていたけれど、ちゃんと生活費等は渡すつもりだ。
ここに住み込みになるから、今借りているマンションは解約するべきか。家具も持ってくるものはそんなにないだろうし売るか処分しないと。
「髪乾かせよ。」
「タオルで拭いたから、すぐに乾きますよ。」
「風邪引くだろ。」
「…そこまで体弱くないですよ。心配症ですね。」
また手首を捕まれ、今度はソファに座らせられる。…さっきとは違って痛くないけれど、薄っすらと青紫色に変色している手首を見て、三浦さんは泣きそうな顔をして小さく「ごめん。」と俺に謝った。俺は、笑って大丈夫だと答える。…大丈夫、もういつもの三浦さんだから。
壊れ物を扱うかのように、手首を撫でられて…何か気まずい。
「鳥肌たちそうなんで止めて下さい。」
「傷つけたから、やっぱ嫁にもらわないとな。」
「嫁とか嫌ですよ。」
「お前に掘られるのはな…。俺がお前の下で喘ぐとか、キモいだろ。」
「あー、モザイクとか色々かけたいですね。でも、ギャップ萌えとかあるんじゃないですか。」
「ギャップとか…ないな。」
常に壊れ物を扱うかのように接してもらうのは嫌で、気を使われるのも嫌で…、一か八かいつものように接してみれば三浦さんもそのノリを返してくれてホッとする。
「俺だって、掘られるのは嫌ですよ。」
「じゃあ、お前は俺で勃つのか?」
「…その時次第ですよね。」
「はい、天野が掘られる方に決定。」
そりゃあ、体系的には三浦さんが攻める方だろうけど、俺は掘られたいと思わない。前の時は攻める方だったし。…それに、喘ぎたくない。俺が喘いでる姿を想像するだけで吐き気がしそうだ。それなら、三浦さんが喘いでいた方が断然マシだろう。案外、いけなくもないかもしれない。世の中には、そういうカップルもいるだろうし。
…俺は、三浦さんを好きにならないと駄目なんだろうか。もう恋愛はしないと決めたのに。俺の事が好きな人と、一緒に住むのを了承してしまったんだから、そういう事になるんだろうか。三浦さんは、俺を好きにさせるというけれど…やっぱり、自分を捨てて女性の方に行かれた時の事を考えると、前みたいに傷つきたくなくて恋愛なんて嫌だ。
「味、大丈夫か?」
「はい、美味しいですよ。」
セックスは出来ても、子供は出来ないし日本だと結婚も出来ない中で、何で俺をそこまで必要とするんだか。セフレという関係もあるというのに。
パスタを褒めると嬉しそうに笑うから、本当に勿体無いと思ってしまう。俺と付き合っても何のメリットもない。家庭を築く事が出来ない。今、この場に居るのは俺ではなく女性だったら。
「やっぱり、明日だけは会社に来てくれないか…?」
「そうですね。急に在宅でするとなると不自然ですもんね。」
「…自己中で悪いな。」
「そんなの前からでしょ。というか、人のケツ揉んでた方がよっぽど悪かったですよ。」
恋人だとか特別な関係になんてならなくていい。今のまま、こうやって冗談を言い合える気楽な上下関係でいたい。そう願っては駄目なんだろうか。
食事をし終え、食器を片付けようととすると案の定三浦さんに断られる。手が荒れたらどうするんだと、意味不明な事を言われた。どこまで心配症なんだよとツッコみたくなる。この人は頑固だから譲ってくれないだろうと思いテーブルを拭き始めると、布巾を没収されてソファへと誘導される。俺を座らせたかと思うと、テレビの電源を付けてまたキッチンへと戻って行く。…おとなしくしてろってか。
「俺は、お坊ちゃまかっての。」
「言ったろ。俺は尽くしたいんだって。」
「限度があるでしょ。」
今時の幼稚園児だってテーブルぐらい拭くし、小学生なら食器だって洗う。
見たい番組もなく、スマホでデザイン収集でもしていれば片付けを終えた三浦さんが俺の隣に座り、俺の肩にブランケットをかけた。
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