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休日の過ごし方(4)
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~ Kousuke’s side ~
「天野、時間だぞ。」
布団を顔半分まで被って、丸まっている体を揺する。起きている時とは違って、気の緩んだ表情で寝ている姿に心が温まる。あまりにも可愛いものだから、このまま寝かしてあげたい気持ちもあるさ。でもやっぱり、好きな人と過ごす時間はどれだけあっても足りなくて、早く起きてお前の声が聞きたいと思ってしまう。
「もうちょっとだけ…。」
「朝食出来てるんだから、冷めるだろ。」
「んー、嫌だ。」
「起きないと、抱っこして運ぶけど?」
そう言うと、嫌そうな顔でゆっくりと起き上がる。わかっていても、多少は傷つくんだけどな。
面倒くさそうに、俺の前で堂々と服を着替え始めるコイツは、いつになったら自分の立場を理解してくれるのか。ついこの間、俺はお前を無理矢理犯そうとしたのに。代表という立場を使って、誰とも話してほしくなくて、ただの俺の嫉妬や束縛でお前を急に在宅ワークへと移したのに。そんな危険人物が目の前に居るということを、コイツはちゃんと理解していない。
「…。」
「二度寝は禁止だからな。」
「わかってる。」
眠そうに欠伸をしながら、目を擦っている姿でさえも愛おしい。寝起きは特別で、口調が敬語じゃなくなるのも愛おしい。
顔を洗いに、洗面所へと向かう姿を見送って、ご飯や味噌汁をよそうためにキッチンへと戻る。天野が好きだと言うから、味噌汁の具は玉ねぎ。玉ねぎの甘みが広がって、俺も好き。卵焼きは、だし巻き卵じゃなくて甘いのが良いと言うから、甘い卵焼き。レバーとかが嫌いだと言うから、ほうれん草の胡麻和えで鉄分摂取。あとは、鯖の塩焼きとそんなに酸っぱくない梅干し。朝は、洋食の日もあれば和食の日もある。今日は昼に、天野が気になると言っていたカフェでランチだから、朝は和食にしてみた。
「また朝から凝ってますね。」
「愛情だ。」
「珈琲と食パンとかでいいのに。」
別に対して凝った物は作っていない。味噌汁は昨日の夜に作ったものだし、ほうれん草の胡麻和えは作り置きの物だ。というか、もうくせになってるから、全然苦ではないし、美味しい物を食べた方がその日の気分は良くなるし。
「夜はどうしようか。荷物って、どれぐらいあるんだ?」
「家具は必要なものはないので、ダンボール2箱分ぐらいですかね。他に必要なものがあったら、また仕事帰りにでも取りに行ってきますし。」
「じゃあ、夜も作ろうかな。荷物を取りに行った後、スーパーに寄ってから帰ろう。」
何を作ろうか。明日は日曜で休みだし。花見もいいな。
「明日は花見行かないか?」
「…来週にしましょうか。」
「ちぇ。」
なら明日は、ケーキでも焼こう。一人の時の休日は、大抵最新の話題をチェックしたり、Web会社やWeb関係の人のブログを読んだり、勉強するのが殆どだった。けど、天野が一緒に住んでくれる事で、出かけられる場所も増えるし、楽しみも増えた。一人で居ると、どうしてもネガティブなことを考えたりしてしまうから。誰かと一緒に暮らす方が断然良い。
朝食を食べ終えて後片付けをし、車で映画館へと向かった。
「ポップコーン食べるか。」
「朝ご飯を食べたばかりだし、昼食べれなくなるので飲み物だけで。三浦さんは何頼みます?」
「ウーロン茶でいいかな。」
「じゃあすみません、レギュラーサイズでウーロン茶と、レモンティーのホットで。」
「お会計、500円になります。」
財布から1000円札を取り出そうとしたら、天野が先に500円玉を置いた。
「俺が出す。」
「いえ、大丈夫です。」
「さっきのチケットもそうだったじゃねぇか。」
「毎回奢られるのは嫌なんですよ。そのうちお金破産しますよ?」
さっきも今と同じで、天野がチケットの注文をし、俺がお金を出そうとする前に天野がお金を払ってしまっていた。…奢られるのはみっともない気がして、2人分の代金を天野に渡したら受け取ってもらえなかった。確かに、2人で何処かに行く度に俺が奢っているけど、そろそろ慣れて欲しい。
「ただでさえ、生活費を受け取ってくれないんだから、こういう時ぐらい払わせて下さい。」
「…。」
「不服そうにされても困ります。」
天野を養う事で、俺の中で優越感みたいなのが生まれるんだよ。もう、仕事しなくてもニートでも良い。家に帰って、そこに居てくれたらそれで十分幸せなんだよ。と言っても、天野には理解してもらえないだろう。
こうやって、2人で出掛けるのは勿論楽しいし、俺が言い出したことだ。だけど、中性的な見た目を持つ天野は人目を引く。男女両方から。今は、細身のモデル体型の男が流行る時代だから、映画を観に来た女子高生だろうか。さっきからずっと天野に夢中のようで、友人と頬を染めて楽しそうに会話をしているのが、視界に入る。
「そっち、ちょっと飲ませてくれ。」
「どうぞ。」
天野が丁度飲んでいたレモンティーを渡してもらい、一口頂いた。態と見せてやる。男同士だからとか思われるかもしれないから、こういうとき天野か俺が女だったら良かったのにと思う。
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