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特別な日(2)
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~ Kousuke’s side ~
本当は、自分の誕生日なんて嫌いで仕方がなかった。
毎年、この日は1人で居るのが辛くて、誰かと一緒に居るようにしていた。1人でこの家にいると、おかしくなりそうで。
「ネクタイと…アルバム?」
本当は、誰かではなく皐月と一緒に過ごしたいと思っていた。けれど、皐月には光君がいて俺の誕生日は勿論一緒に過ごしてくれる事もなく。別れてからは、完璧に拒否られて。それでも、毎年洋菓子とか”消費”出来る物をプレゼントしてくれて。形に残るものが欲しいと思っていても、それを言葉に出すことはなかった。
今年は皐月が一緒に居てくれる事がプレゼントだと、凄く嬉しくて仕事が終わるのが待ち遠しくてしょうがなかった。それなのに、玄関の鍵は閉まっているし、室内は電気がついていない。何度名前を呼んでも、いつもみたいに面倒臭そうな返事はなく、電話をかけると室内に響く着信音。
一緒に居て欲しいと願った日に、一緒には居てくれない。欲しいと願っても、皐月はどんどん遠くへと離れていく。そう思い、泣きそうになってやっと皐月は戻ってきて、ケーキを買ってきてくれたり、俺の好きなビーフシチューを作ってくれたり、今年はいつもとは違って、俺が欲しいと思っていた”形に残る”プレゼントをくれた。
「ネクタイは、まぁ康介さんは着けることが多いですし、定番かと思って。そっちは、何かと写真を撮ったりとか形に残したがるから。」
「やっぱ、お前好きだわ。」
「喜んで頂けて光栄です。」
自意識過剰かもしれない、自分の都合の良いように考えているだけかもしれない。俺、やっぱり皐月と相性が良いと思うんだ。なぁ、皐月はそう思ってくれないのか。まだ、俺はお前の中で上司と部下の関係なのか。
「ゴールデンウィーク、やっぱさ1泊2日ぐらい旅行に行こう。このアルバムにいっぱい写真を貼りたい。」
「その前に花見忘れてません?」
「ちゃんと覚えてる。来週の土曜日に無理矢理にでも連れて行こうと思ってた。良かった、ちゃんと覚えてくれているんだな。」
「どれだけ、俺が忘れっぽいと思っているんですか。」
「んー、あ、でも、嫌な事とか根に持っていそうだな。」
「それはそっくりそのまま、康介さんにお返しします。」
「そういう所、似たもの同士かも。」
「さぁ、どうですかね。」
気にしていないフリをしているだけで、本当はずっと心の中に溜め込んでいく所は少し違うかもしれないけども。俺の場合は、すぐ爆発してしまうから。
「で、そろそろ好きになってくれた?」
「すぐ調子に乗りますね。なってないですよ。」
「お前の為になら、俺を捧げてもいいと言っているのに。」
「抱く側にさせてもらったとしても、好きになるかどうかは別ですよ。まぁ、その勇気は良いと思いますけど。」
「試しに抱いてみるか?」
「いえ、大丈夫です。」
腰をひいて、抱き寄せようとしたら見事に手を抑えられた。
俺は、お前が来てから一度も性欲を吐き出していないから、そろそろキツいんだけどな。皐月は性欲が薄そうだ。
「ヌき合いぐらいはどうだ。」
「誕生日だからって、良いという訳無いです。一人で処理して下さい。」
「お前…本当に性欲ないだろ。」
「ほっといて下さい。」
体力なさそうだから、すぐに疲れて眠るんだろうな。それは、それで可愛い。積極的な、余裕のない表情も良い。
「変な事考えないで下さい。」
「いやぁ、そろそろキツくて。」
「トイレに行くか、俺が居ない時にしてください。何なら、今から出かけてきますけど。」
「いやいや、こんな遅い時間帯に外に出かけさせるわけないだろ。」
「じゃあ、トイレ行って下さい。」
「…何なら、お前を目の前にして出来る。」
「…俺は見たくないです。多分、次の日から避けますね。」
好きな人と一緒に暮らすってのも、ある意味拷問なんだな。まぁ、お前を目の前にして1人で出来るわけない。欲望に負けて、襲ってしまいそうだ。もう、2度と怖がらせたくないし。
「今日は、ケーキもプレゼントも夕飯もありがとうな。」
「大した物じゃないですけど。」
「来年も、同じのが良い。」
「考えなくていいから楽ですね。」
「だから、1年でこのアルバムいっぱいの写真を撮りに出かけような。」
「…アルバムにするんじゃなかった。」
さり気なく、来年も一緒に居て欲しいと意味を込めて。来年じゃなくても、これからずっと居てくれることを願っている。
「皐月の誕生日は何にしようか。」
「まだまだ先ですよ。」
「毎年、何が良いか聞いても、何でも良いって答えるもんなぁ。物欲が無いのか。」
「くれなくて良いんですけどね。」
「それは却下。今年は、一緒に過ごせるから…豪華に祝おうか。」
「質素で大丈夫です。」
「旅行もいいな。」
「長期休暇ないのに、旅行なんて嫌ですよ。」
とは言っていても、嫌々ながらも付いてきてくれる事を俺はちゃんと知っている。
美味しい物を食べて、旅館に泊まって、2人で浴衣を着て。
その前に、来週の花見は2人で桜を見て、近くのカフェでご飯でも食べようか。流石に、2人で弁当を食べながらの花見は人目が集まるだろうから、きっと皐月は落ち着かないだろうし。もしかしたら、屋台とかも少し出ているかもしれないな。酒を飲みながらの、花見も惜しいところだ。
いっそ、一軒家を買って庭に桜を植えるのも悪くない。ログハウスも捨てがたいし、古民家を改築するのも良い。木造が良い。今まで真面目に働いてきたわけだし、まぁまぁの貯金はある。あとは、ローンで払っていって。あぁ、考えただけでも凄くワクワクする。猫を買うのも良いな。…あ、でも皐月に懐いてしまったら妬いてしまうかもしれない。
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