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変化(2)
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~ Satsuki’s side ~
今日の珈琲は、つい先日買ったばかりの新しい物。俺の影響で康介さんもハンドメイドのアプリを見るようになり、お互い気になったものがあればどちらかが買って2人で共有するようになった。粉で売っている事はあまりなくて、態々本格的に家カフェの用な感じで、豆を挽く為にデザインにまでこだわりミルを買い、色違いのコーヒーカップも買った。というか、康介さんが買った。俺はどちらかと言うと紅茶派だけど、仕事の時と朝起きた時は眠気覚ましに珈琲を飲む。康介さんは珈琲派だけど、俺が紅茶を飲んでいる時は康介さんも一緒に紅茶飲む。
「いい香りですね。」
「当たりだな。」
両手にカップを持ち、テーブルの上に置かれる。淹れてくれた珈琲を早速頂こうと、前かがみになろうとする直前で目の前に、俺の足の間に康介さんが腰を降ろした。
「…飲めないんですが。」
「ん?はい。」
「…ありがとうございます。でもですね、ちょっと座高の問題で俺ニュース見れないんですけど。」
「じゃあ、ちょっと下にズレる。」
「いやいや、隣に座ったら良いと思います。」
「んー…。」
ズルズルと、下にズレて俺の胸に頭を預け、珈琲を飲みながらニュースを見始める。…意地でも隣に移動しないってか。
夜に1度目が覚めた時、自分の腕の中ですでに康介さんが寝ていたけれど、特に驚きもしなかった。少しずつ、このスキンシップにも慣れてきているし、別に嫌でもなく、突き飛ばすことも避ける事もしなくなってきたな。…慣れって怖い。この関係って、もう恋人みたいなもんだよな。セックスしてないだけで、キスはしてしまったわけだし。俺も散々、恋はもうしないと思ってきても段々と受け入れ始めてるし。いつかは本当に、シてしまいそうだ。
今の状態のままだと、本当に康介さんが挿れられる側になるんだろうか。…別に、小さくて可愛い人限定で好きになるわけでもないし、年々好みも変わってくるもんだし。というか、影響されやすいだけなんだけど。昨日、気づいたのは可愛い人の涙より、普段人前で泣かなさそうなしっかりした人の涙の方が好きだということ。
「なんか、お前にくっついてると眠たくなる。」
「寝たらいいじゃないですか。」
「もったいない。」
「別にもったいなくはないと思いますけど…。折角の休日ですし、ゆっくり体を休めたらどうです?」
「今日は、皐月と出かけると決めていたんだ。そのついでに駄菓子屋にも行けばいい。」
「また今度でもいいじゃないですか。」
「無理。」
俺に気遣わず、自分のペースで行動してくれればいい。いつだって、俺優先に考えるし、俺に対して自分を大切にしろだとか言うくせに、康介さんだって人のこと全然言えないくせに。
お互い手にしていたマグカップをテーブルの上に置いて、寝やすいようにとこの背もたれにされた環境から抜け出そうと体を動かす。
「何処に行くんだ。」
「寝やすいように、ソファから降りるだけですけど。」
「じゃあ、寝ない。」
「寝ててください。俺がこの家に住まわせてもらうようになってから、気遣いっぱなしでゆっくり出来ていないでしょ。」
「そんなことない。」
「いいから、寝ててください。」
眠たくなると言ったくせに、寝ようとしないから無理やり横にならせて、ひざ掛けをかけてあげる。結局、俺がこうやって無理矢理しないといけないんだから。不服そうに見ているのを無視して、ソファの下に座れば肩を叩かれる。
「なんですか。寝てください。」
「ここに腕置いて。」
「腕?」
ソファの上に腕を置けと、よくわからない事を言い出すな。いい加減、寝てくれればいいのに。寝てる間に、昼ごはん作っておこうと考えてるから、手際がいいわけじゃないし、さっさと寝てほしいんだけど。
「これでいいですか。」
「ん。」
何をしたいのかわからずに、言われるがまま腕を置いたけど…、置いた腕に顔を近づけ抱き枕かの用に、抱きしめられる。…なんだろう、不覚にもキュンとしたというか。イケメン、いや、ハンサムな男に自分の腕を抱きしめられて眠られるって。可愛くないはずなのに、可愛く見える。…俺の目も、感覚も段々おかしくなってきている。
「俺が起きるまで、このままな。」
「この体制、疲れるんですけど。」
「我慢しろ。」
俺が在宅で仕事をするようになってから、この人の甘えが増えたな。普段気を使われっぱなしで、それはいい事だけど、この関係になんと名前をつければいいのだろうか。恋人ではない。ただの上下関係でもない。家族でもない。この関係は、いつまで続くことができるのだろうか。
数分もすれば、康介さんは眠ってしまった。腕を離してもらいたいところだけど、がっしりと掴まれていて無理だ。
康介さんが起きるまでの間、スマホを弄るしかなくて、ただタイミングがいいのか悪いのかLGBTについての記事があり、なんとなく目を通す。L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシャル、T=トランスジェンダー。康介さんは多分バイセクシャルで、俺はゲイ。いまいち自覚はないけれど、今まで女性を好きになったことも付き合ったこともないわけだし。
こういう記事や単語を見るだけで、毎回同じことを思う。何故、男性同士では子供も結婚も出来ないのだろうか。少なくとも結婚は他の国では認められていても、日本はまだ認められていない。それに、いくら認められている国でも差別があることに変わりはない。ある国では、殺されてしまうところもあるらしい。
一体、同性を好きな事に何の罪があるというのだろう。同じ人で、ただ少し見た目が違うだけなのに。ラブホテルも不動産会社も、男2人だと断れることがほとんどらしくて。女同士なら、まだ手を繋いで外を歩いても、お互いの食べ物を共有しても、おそろいの服を着ても許されることが男同士には許されない。女同士よりも、男同士のほうが世間は厳しい。
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