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変化(12)
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1冊の本を読み終えるのにかかる時間は2時間半程度。邪魔をされることもなく、久々に集中して読むことが出来たせいか、最後まで読んでしまってから、もはやオジヤと化した食べれなくはないけれど不味い雑炊を食べた。そして、次の本を読む前に食器を片付けて、さっき水洗いして洗剤につけておいた服とかを洗濯。掃除はまた時間がある時にでも。俺は、康介さんと違ってマメな性格ではないから、毎日掃除をしなくてもいい派だ。出した物をちゃんと元の場所に直したり、ゴミをちゃんとゴミ箱にさえ入れていれば、部屋はすぐに汚くはならない。
部屋に戻ると、まだ寝ていた。本に没頭していて12時はとっくに過ぎている。何か食べさせて薬を飲ませるか。起きるまで待たせておくか。後者を選択して、元の場所に戻り次の本を手に取る。…苦しそうな顔で寝てるな。この様子だと、明日までには治らなそう。少しズレてしまっている布団をもう一度掛け直してやる。起きていないし、きっと無意識なんだろうけど、またピタリと俺の脚にくっついてくる。
それから本を1冊、2冊と読み終えた時、下から見上げるような視線にやっと気づいた。
「具合どうですか。」
「もう平気だ。」
「…本当は?」
さっきみたいな前科がある為、疑いの眼差しで聞くと気まずそうに目を反らす。
「ゼリー、果物、雑炊、うどんのどれがいいです?」
「ゼリー…。」
「ん、持ってきます。」
もう、俺に頼らずに自分で何かをしようとする気はないらしく、申し訳なさそうにそう答える。雑炊かうどんを食べてほしいけど、また吐いてしまうかもしれないから仕方ない。言われたゼリーと、薬と水を乗せたお盆をサイドテーブルに置く。最初に水を飲ませ、その後にゼリーを渡せば、やはり食欲がないのかチビチビとゆっくり、飲み込みにくそうにしながら食べている。
いつもなら数秒で食べ終わりそうなゼリーを、10分近くかけて食べ終えたのを見て薬を飲ませる。今まで、これぐらい体調が悪かったときはどうしてたのか。知ってる限り、見たことないし、学生に例えるなら皆勤賞レベルで出社しているし。
「今までも、体調が悪い時は誰にも言わず我慢してきたんですか?」
「いや、ここまで体調が悪くなることなんて滅多にない。」
「…ということは、余程男同士のセックスが合わない体だったんですね。もうやめておきましょうか。」
「コンビニのトイレとか、会社以外のトイレに行って吐いたりしてました。」
「そこまでする理由は。」
俺からのその質問に答えれないのか、話すのを待ってみるが口を開こうとしない。まぁ、話したくないのなら無理に聞くまでもない。話したくないことなんて誰にだってあるし、理由を教えれないとしてもこれから俺が我慢させないようにすればいいだけだ。
「とりあえず、今日は風呂に入らないでください。汗を拭くだけで我慢してください。」
服を脱がせて、持ってきたお湯につけたタオルを絞り体を拭いてやる。いくら体調を崩していても変わらない筋肉量に少しむかつきながら。
「本、何読んでたんだ。」
「自分の寿命と引き換えに、世界から何かが消えていくっていうのです。」
「それは、自分で選択できないのか。」
「悪魔が勝手に決めてしまうんですよ。だから、自分に選択肢なんてないんです。自分の寿命か、どうでもいいもの…大切なものを消してしまうか。」
あることが当たり前だと思っていたものが、もしも突然世界から消えてしまったなら。それはきっと少しは悲しくなるんだろう。
「そっちは。」
「これは、孤独な男の子と吸血鬼の恋愛モノ。いじめられっ子で、孤独な男の子が同じく孤独な吸血鬼を好きになるんです。ちょっと、ホラーっぽい感じですし、映画化してますよ。日本で公開されているのと、本国のだと解釈が違ってくるように編集されているみたいです。」
「じゃあ、こっちは。」
「飛行機の事故で恋人を亡くした人を元気づける為に、アンドロイドが亡くなった恋人の代わりを演じてその人を元気づけようとしていく話です。でも、その人が持っているルービックキューブの面の色を合わせていくと幸せな内容ばかりじゃなかったんです。」
「どんな内容だったんだ?」
「それは自分で調べるか、映画とか本を見て知ってください。こっちは、アニメーション映画で時間も短いですよ。」
本を読むことは好きなんだけど、映画を見たときでもそうだけど、どんな内容なのかと聞かれると上手くまとめて説明が出来ない。…上手く伝わっただろうか。面白い場面を全然伝えられていない気もするけど、それでも興味があるような感じで聞いてくれている。
本当に見ようと思ったのか、本を手に取りパラパラと軽く捲って目を通し始める。
「また今度、体調が完全に良くなってからにしたらどうです?」
「今日はすでに沢山寝てるから、これ以上時間を無駄にしたくないんだよな。」
「一日中寝るのもいいじゃないですか。体を休める日ってことで。」
「映画、映画の方を見たい。」
「また今度。」
「明日から仕事が忙しくなるから、今見とくべきだろ。」
意地でも今見ようとする康介さんを無視して、本を片付け、無理やり寝かせてまた布団をかけ直す。明日休ませようとしていることは、今は秘密にしておこう。どうせ、また騒ぐから。
「風呂入ってきます。俺が入ってる間に寝てくださいね。」
そう言っても寝ないであろうことは承知の上だが、体調が悪化するよりは退屈でもベッドで横にならせておく方がいいだろう。今まで、家事も仕事も両立して、睡眠時間が短かったわけだし。
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