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負けず嫌い(3)
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〜 Satsuki’s side 〜
あっという間に歓迎会の日になった。多忙なスケジュールだったせいか、後半康介さんはボロボロだった。だから、俺は康介さんが疲れて先に寝たあとに、アラーム設定を止めて自分のスマホだけアラームはセットし、康介さんを起こさなくてすむようにとイヤホンをして寝ていた。で、自分が先に起きて康介さんがやっていたことを全部こなしてから、起こしてやっていた。多分、普段の忙しくない時だったら、アラームが鳴らなくても先に起きていた場合があったかもしれないが、余程疲れていたのか爆睡で起きなかった。まぁ、俺が起こすたびに、朝不服そうな顔をされるけどしらない。
歓迎会が開催される店につくと、俺待ちだったようで入り口にいた飯塚さんに腕を引っ張られる。今は、俺だけが在宅だからそうなるか。
「新入社員のみんな気になっていただろうけど、この人が皐月くんねー。」
ぐいっと肩を組まれて、大勢の社員の前で紹介される。気になっていたって何だと引っかかる部分はあるけど、奥に座っている人の不機嫌オーラがダダ漏れで聞き直すことはやめた。多分、飯塚さんは気づいていてわざとやってるから、余計に質が悪い。
その不機嫌さんが言っていた、新入社員らしき人が視界に入ったけど、これ以上怒らせないために見ることは諦める。俺よりも付き合いの長い菊池さんは、勘付いてくれたらしく俺から飯塚さんを引き剥がしてくれて、奥へ行くようにと促される。お礼を一言いって、とりあえず不機嫌さんの横に座る。
「本気でアイツ締めてやる。」
「面倒事はやめてください。」
「除菌しないとだな。」
目が本気だ。そんな俺達に菊池さんは苦笑いで、どんまいと口パクのエールを送られる。
俺がついたことで、新入社員が一人ずつ挨拶をしていき、康介さんの掛け声で乾杯して一気に騒がしくなる。何を話しているのかしらないが、女性の新入社員の人にはチラチラと見られ。横ではやけ酒かっていうぐらいのペースで酒を飲む問題児がいるので、ストッパー係をやらないといけない。
「寝不足なんだから、そんなに飲まないほうがいいですよ。」
「そうですよー。あとで皐月くんが大変な思いをするんですから。」
「全部お前のせいだ。」
そう言いつつ、周りに見られないテーブルの下ではしっかり俺の手を握っている。面倒くさい人だ。ふと視線を感じて、顔を向ける。…見た目はそれほど似ていないけど、雰囲気がそっくりでこの人だとわかる。負けず嫌いそうな、何でもこなしていきそうな感じの人だ。俺が視線を向けたことによって、相手は違う方を向く。
「皐月くんは、もうずっと会社の方に戻ってくる気はないんですか?」
「そうですね、今の所予定はなさそうですかね。」
「ほら、飯塚。向こうでお前のこと呼んでるぞ。」
早く飯塚さんを遠ざけたいこの人は、顎でクイッと向こうへと行くように指図する。帰ってから面倒臭そうだな。
また、続けて飲もうとしていたジョッキを奪い休憩させる。病み上がりからの、多忙な仕事で短時間睡眠とストレスでボロボロの状態で、そんな浴びるように酒を飲んでいたら、いくら酒豪だとはいえすぐに酔いが回って気分を悪くするだろう。俺は最初から酒を飲む気はなかったし、康介さんは飲むだろうと思っていたから車できてよかった。
案の定、俺がストップしても飲んでいたせいか気分が悪くなったみたいで、無言で壁に背を体重を預けてじーっとし始めた。それに気づいたらしい、井上くんが冷たいお手拭きを貰って来てくれて、受け取ろうとしたらぐらりと体制を崩して俺の上へと倒れてきた。
「大丈夫?どこか打ってない?」
「あ、はい!すみません、大丈夫です。」
反射的に守ろうとした腕が、井上くんの背中に回した状態で。井上くんは俺の胸へと飛び込んたかのような体制で。慌てて、俺の上から退いたものの、背後から黒いオーラが。とりあえず、その面倒なのは放っておいて本当に大丈夫なのか確認をする。見た感じだと大丈夫そうだ。井上くんが自分の席に戻ったところで、渡されたお手拭きを康介さんに渡す。
「何もそこまで不機嫌にならなくていいでしょう。酒を周りに飲まされて、フラフラだっただけじゃないですか。」
「無理。」
「それに、康介さんの為に持ってきてくれたのに。」
結局、俺と菊池さんと飯塚さん以外は気づいていないだろうが、終始機嫌が悪いままの康介さんを車に乗せて家へと連れて帰った。ベロンベロンになるまで酔っているせいで、足取りは覚束なく部屋まで運ぶのに苦労した。車内で、助手席で「絶対、井上はお前のこと好きになった。」だの、ずっとお前のことを見ていたなどしつこくうるさかった。俺は、あの視線は俺に向いていなかった気がするが、面倒臭いからあえて言わなかった。
機嫌がすこぶる悪かった癖に、部屋へとついた瞬間ベタベタにくっついて甘えてくる。体調が万全じゃない時に飲ますべきじゃないなこれは。
「皐月、キス。」
「はいはい。」
軽く一回キスをしてやれば、足りないと肩を押され押し倒される。そして、上に乗っかかられひたすらキスの雨を受ける。俺が受け身になって何もしないでいると、下が口内に侵入してきて、絡めようとしてくる。声を漏らしながら、貪るかのように必死だ。しばらくすれば、キスをするだけの体力しか残っていなかったのか、キスの最中で寝落ちされ、呆れて笑いそうになりながらもそのまま寝かせてやることにした。
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