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徹夜明けのお泊り(7)
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~Satsuki’s side~
”もしさ、俺が結婚したらお前はどうする。”
何で、俺にそんな事を聞くんだろう。そんな事、三浦さんの将来の事だから俺に聞く事じゃないのに。普通に祝うことしか出来ないのに。何で、態々俺に聞く。どんな答えを求めて、俺に聞く。好きにすればいい。俺の事じゃない、三浦さん自身の事だ。俺が何かを言う権利はないし、言うつもりもない。
結婚。それが普通の将来。特に、三浦さんみたいな人は女性と結婚して、家族に恵まれるべき人間だと思う。
俺が祝うと言えば、三浦さんの表情は少し暗くなった気がした。答えを間違えたんだろうか。俺とだったら結婚するって、そんな事出来やしない。それに、俺は…もう誰も好きになりたくない。結婚という鎖をつけてまで、付き合いたいだとか一緒に居たいと思わない。
カレーを作るの手伝おうにも、サラダを作るのも手伝おうにも、全て断られてテレビを見ているという仕事を与えられた。全部、自分で作ったものを食べてもらいたいとか、休んでろとか、邪魔者扱いをされた。そのせいか、確かにカレーもサラダも美味しかったけど。泊まらせてもらって、奢ってもらって、料理も作ってもらって…落ち着かない。お風呂はまた先に三浦さんが、と思えば今朝の事があったせいか、強制的に先にバスルームへと閉じ込められた。…やっぱり、体格の差のせいか力で全く敵わない。
お風呂から上がれば、今度はまた強引にソファに座らせられてタオルで髪を拭かれ、ドライヤーで乾かされる。その後は、自分もバスルームに向かっていったけど…俺の世話しすぎだろ。俺は三浦さんの子供か弟か。…ただ単に、面倒を見るのが好きなんだろうけどな。
「天野ー、一緒に寝るか。」
「おかしい。」
お風呂上がりで暑いのか、上半身裸という状態で出てきた三浦さんは、ソファに座っている俺にそう話しかける。
「お前、俺のベッド好きだろ。」
「…寝心地は良いですけど。ソファ借りてもいいですか。」
「却下。ほら、連れてってやるから。」
「嫌だって。」
「文句言うんじゃない。」
そう言って、俺の方に向かってきたと思えば、ふわっと浮いて方に担がれる。
「降ろしてください。」
「嫌だね。俺は、お前と一緒に寝るって決めたんだからな。」
今すぐ、地面に足を着けたい。けれど、ここで暴れてもし倒れたりなんかしたら、三浦さんに怪我を負わせてしまうかもしれない。…このまま担がれているしか方法はないのか。
「やっぱ、軽いよなぁ。もはや、体質のせいなのか。」
「体重はどうでも良いんで、降ろしてくれると嬉しいです。」
「もうすぐ、ベッドに着くから待てって。」
「…はぁ。」
この人は、出来る人だし大人だ。俺なんかよりもずっと。でも、俺といる時は子供っぽい。自分がしたいと思った事は、意地でもする。俺の意見なんか無視して。けど、それでいて世話だとか、金銭面だとか、その辺は俺にはさせないし、払わせない。変な所で子供。変な所で大人。機嫌を取るのが難しい人。
同じ男で、恋人でもないのに優しくゆっくりベッドに降ろされる。…まるで恋人扱いだ。恋人扱いなんてされたくない。酷く犯して、冷たい態度をとってくれた方がマシだ。こんなにも壊れ物を扱うように優しくされるよりは。…優しくされたくない、と言ったら。酷く、性処理の為に犯せばいいと、貴方に伝えたら貴方はどんな反応をするんだろう。
俺の要望通り、酷く無理やり犯す?
軽蔑して俺から離れていく?
要望とは反対に優しく抱く?
…それと怒る?
元々、三浦さんが恋人だったら良かったのにだとか思ったことはあった。きっと、幸せになれるだろうと。でも…もう、恋なんてしないと自身に誓った。それなのに、こんな風に如何にも好きだというオーラを出されて、恋人にするような事をされると困る。また、同じように恋をして、飽きたら本当の気持ちに気づいたら俺の事なんか捨てて、他の人の所にいくんじゃないか。人間なんて信用出来ない。俺自身も信用出来ない。自分の気持ちを自分でコントロール出来たら、どれ程楽なことか。
「あー、明日からまた仕事か。なぁ、今度の休み本当に何処か出掛けないか。」
「しつこいですよ。」
「ちぇ。…もうちょっと、そっちに寄ってもいいか。」
「嫌です。」
「…じゃあ、お前をこっちに寄せるわ。」
は?と疑問が芽生えて、何の事だと理解する前に腰に手を回されて、あっという間に三浦さんと密着する。
「は、離してください!」
「やだね。お前がうちでシャワーを浴びる度、俺と同じ匂いとお前の匂いが混ざって、いい匂いするから堪んない。」
「堪んないもくそもあるか!早く離せって!」
「とか言って、力では俺に勝てないし。それにどうせお前、俺の事殴ったり出来ないんだろ。」
「さっさと、手をどけろ!」
「やだって。…なぁ、天野。」
手を退けようと、両手に力を入れても逆に強く抱きしめられるばかりで離れやしない。
「俺と一緒に、此処で暮らさないか。」
一瞬、呼吸するのを忘れた。ダイレクトに鼓膜に響く声が、心地良いとさえ思った。それと同時に、心臓が縮んだ気がした。折角、シャワーを浴びて浴槽にも使ったのに、冷や汗が出る。怖い。そんな言葉聞きたくなかった。
「別に、まだ俺の事好きじゃなくても良い。…考えてくれないか。」
真剣な声。首筋にに当たる息。どうして、この人が好きなのは俺なんだろう。俺にこの人は勿体無いのに。
「嫌です。」
「まだ、返事はしなくていいから。もっと、長い時間考えてから答えをくれ。」
…どれだけの時間を使っても、俺は貴方と一緒に住みたくない。今以上の関係になりたくない。
もう、俺と貴方の間には亀裂が入り始めていた。
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