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完璧人間の崩壊
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~Kousuke’s side~
別に断られることなんて、想定済みだしそこまで同様なんかしない。そりゃ、ショックは受けているけどな。好きな人にプロポーズに近いものをしたのに、断られたんだから。
「あー、三浦さんズルい。僕も天野君と一緒に出勤したかった。」
「黙れクソガキ。」
「クソガキじゃないです、飯塚です。」
最近、天野の周りをウロウロと金魚の糞みたいにくっつきやがって。
「天野君、今日一緒に飲みに行きませんか?」
「あー、すみません。」
「コイツ、酒弱いから無理だぞ。バーカ。」
「え、そうなんですか?何か意外だ。滅茶苦茶、酒強そうなのに。」
「三浦さんは強いですよ。2人で行ってきたらどうですか。」
誰が、こんなクソガキと飲みに行くか。同じ奴を狙っているような敵なんかと。俺は、お前と飲みに行きたいのに。強くない酒を飲んで、酔って少し甘えてくれる姿を見たい。
「僕は、天野君と飲みに行きたいんだけど。そっかぁ、酒弱いんだったら普通の飲食店でも良いけど。どうですかね?」
「それだったら…まぁ。」
「え、おい。行くのか?俺が誘う時は、いつも嫌そうにしてるくせに。」
「僕は、三浦さんとは違うんですよ。オススメのお店があるんです。お好み焼きのお店なんですけど。」
「あ、俺お好み焼き好きです。」
…非常に面白くない。俺、お前の事好きだって伝えたよな?なのに、そんな俺の前で嬉しそうに他の男と食べに行く誘いにのるか?...ムカつく。楽しそうなのは良いけど、そう俺がさせているんじゃないとすると、俺は全然楽しくない。2人は俺を放置して、仕事が終わってからの話を進めていく。イライラして仕事に集中出来ない。コイツの事になると、いつも余裕でいられなくなる。
「三浦さん、此処の写真なんですけど…。」
「あー、何。」
「どんな感じで加工したら良いですか。あと、切り抜いたんですけど変じゃないですか?」
「とりあえず、お前が思うようにやってみて出来上がったら見せてくれ。…あぁ、悪くないな。」
正直、今聞きに来られても頭が回転しない。後ろから聞こえてくる話し声に耳が傾いて、それどころじゃない。
「三浦さん。」
「…何だ。」
「天野君が、三浦さんも一緒にって言うんですけど。どうですか?」
「あー、今日は予定があるから無理。悪いな。」
「…いや。」
嘘。予定はない。
天野は、何か気づいたのか暗い表情をする。そんな表情をさせたくないのに…はぁ。俺も十分ガキだな。こんな事で嫉妬して、苛ついて八つ当たりだとか。余裕なさすぎだろ。
何か、声をかけたいけどこれ以上ダメな所を天野に見せたくないから、仕事に戻る。
男なんて所詮、好きな奴の前では格好をつけるけど、中身は小学生のままだ。好きな奴はいじめたいし、他の奴と話している姿を見たら嫉妬して、好きな奴にまで八つ当たりするから嫌われたりもする。嫌われたくないんだけどな…。全く、飯塚のせいだ。俺が今まで積み上げてきた努力が台無しだ。
「あの、三浦さん。」
「何だ。」
「お昼、食べないんですか。」
「あー、キリの良いとこで食うよ。だから、俺の事は気にすんな。」
昼休憩。いつもは俺から積極的に構いに行くのに、今日は珍しく天野から俺の元に来た。…だけど、今はそんな気分じゃないから、珍しい天野からの誘いを断る。今日は、ボロが出てしまいそうだから、なるべく天野とは関わりたくない。
俺が天野の誘いを断るのを聞いていたのか、飯塚が天野の元へ行き一緒にテラスへと出て行く。
腹の中が煮えくりかえる。ドロドロとした感情が溢れてしまいそうだ。…俺、こんなにも嫉妬深かったっけ。こんなにも束縛心が強かったっけ。あぁ、今すぐテラスへと駈け出して、あの細い手首を掴み俺の腕の中に閉じ込めてしまいたい。あわよくば、強引にでも唇を奪い、白く無防備な首元に俺の印を刻みつけてしまいたい。
もし、此処が会社でなければ、怒りと嫉妬の感情に任せて押し倒していたかもしれない。…それこそ、嫌われるどころか、縁を切られるだろう。もしくは、逃げられるかもしれない。逃げられて、一生会う事すら出来なくなるかもしれない。アイツは…すぐに逃げ道を探す。相手に感情をぶつけずに、自分の中に感情を閉じ込めて。だから、逃げられた方の相手は気づかない。アイツは、自分の感情を吐き出すのが怖いと思っているから。
まだ、感情をぶつけてくれたほうが楽なのに。何も言わずに、目の前から姿を消された方がどれだけ酷な事か。
「…天野君に八つ当たりしないで下さいよ。」
「じゃあ、お前が天野に寄りつかなければいい話だろ。」
「だって、健気で可愛いじゃないですか。」
「そんな事ぐらい知ってる。…けど、アイツは俺の獲物だ。」
「でも、まだ捕まえてはないんですよね?僕にもチャンスがあるというわけだ。」
「お前、ほんと生意気でムカつくわ。」
「ははっ、ありがとうございます。」
グシャリと、手に持っていた資料に皺が入る。何故、部下のくせに俺に向かって挑発してくる。今すぐにでもクビにされたいのか。
飯塚が去って行ったのと同時に、天野が席に戻る。天野の手には、手付かずのコンビニ弁当。
「…あー、何やってんだろ、俺。」
何が、俺だったら幸せにしてやれるだ。馬鹿じゃないのか。
「天野、ちょっと来い。」
好きな奴を幸せにするどころか、不安にさせて?最近、少しは肉がついてきたかなと思ったのに、また痩せさせるつもりか。自分が馬鹿過ぎて、子供過ぎて嫌になる。
「ほら、さっさと飯食え。」
「…食欲ないんで、大丈夫です。」
「お前が食欲ないのは、大丈夫じゃないから。いいから、少しでも口に入れろ。」
「さっき、チョコレート食べたばかりなので、お腹空いてません。」
「チョコレートは、昼飯じゃないだろ。」
心配をすれば、反抗してくるこいつも十分生意気な餓鬼だ。
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