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9中也という奴
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もう寝てしまったのか、彼からの返事は無かった。
『手前が………そ、……か』
まぁ、私の言葉に言い返した台詞ぐらい解るが。
『手前ぇがそれ言うか』
ご最もな意見であり、中也らしい、いや、最もらしくて中也らしくなかった。
疲れてるからか……。
こんなにも傷だらけに…………
「ん?」
そう言えば……全身はこんなにも酷い傷なのに、顔は、顔だけは、美人のままである。
顔だとバレる可能性があるからか……?
否、きっとおそらく顔を傷付けるのは勿体ないとでも思っているのか……。
確かに、中也は美人だ。
滅茶苦茶殺るクセに、闘い方も荒いのに、美人は崩れなかった。
肌も白いほうだし、顔にかかる髪の毛が邪魔なぐらい……否、それが『綺麗』を醸し出すのだけれど。
女性の様に華奢で、薄い身体。自分より小さな相手が大きく振る舞っても、可愛く見える、という現象は中也にもそれ相応。
実際、マフィア内でも
『中原中也はいい』
と、意味深な言葉が最近うわついている。
「まぁ君、下手したら女性よりも美しいかもね……」
この女性愛を全身で受け止めたがる私でさえ中也を女性以上と買うのだから、凡人にしてみれば嘸かし……
「啼かせてみたいことだろうね」
きっとみんな想像してる。
この顔が、この綺麗な顔が涙で歪み、善がって喘いで、自分を愛してくれたら、と……。
中也の髪の毛を掬い、クルクルと弄る。
細い猫っ毛は緩いカール混じりだ。
「あ」
中也の口元に、拭き落とした血が付いているのに気が付いた。
手元には拭くものがないし……
まぁ、いいか
私は中也の口元に唇を付けた。
あー、ちょっと口まで当たっちゃった。
中也の口元を親指で拭い、『ごめんね』ぐらいの気持ちで頭を撫でた。
「ん……」
あ、起こしちゃったかな…。眠り始めで浅かったかな。
身を動かす中也は少し顔を歪ませて寝返りをうった。
どこを下にしても痛むのだから寝返りなんてしなければいいのに。
布団から出た細くて白い、傷だらけの手をちょっと握り、また布団の中へしまってやった。
おやすみ中也。
私は静かに自室のドアを閉めた。
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