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人形の本音
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……顔を、背けたのは……その……」
(………………い、言えねぇーーっ!
七志乃さんの身体がエロティックだったからとか、ぜってぇ言えねぇーーー!!!)
言葉が詰まる。
というのも、それを言う勇気がまだ整っていなかったにも関わらず、カッコつけた言葉を言ってしまったせいだ。
そら見ろ、七志乃さんが哀れな目で、言葉を積まらせて、金魚みたいに口をパクパクさせてるオレを見ているぞ。
「アオサギ……無理、しなくて、いいんだぞ……」
と、七志乃が唐突に優しい口調でオレを逆に気遣ってくれた。
(……嗚呼、相手に気を使わせてしまうなんて、情けない男だオレは……)
その言葉を聞いたオレは、七志乃の肩から手を離してガックシとその場でうなだれる。
「…………その……偉そうなこと言ってすみませんでした……」
うなだれたまま、反省の言葉を口にする。
まさに自己嫌悪に陥っている状態にオレはなりかけていた。
「あ、アオサギ……」
七志乃がオレの名前を困惑気味に呼ぶ。
「顔を、上げてくれ……」
優しさと困惑を混ぜた様な声遣いで七志乃はオレに指示をする。
オレはその指示でうなだれていた顔を一気に上げて、七志乃の方を見る。
「――――――、」
――瞬間、ヒュッと喉が空気を掠る音を出す。
……そこには、
柔らかそうに微笑んでいる、七志乃がいた――
(笑って、る――?)
さっきまで憂いを見せていた顔だと思えないほど、七志乃の表情は晴れきった様に微笑んでいた。
「な、なんで……」
思わず疑問の声を出した。
「……なんで、って……嬉しいことが、あったら、『人間は』笑う、ものだろ……?」
「嬉しい……こと……?」
う、嬉しいこと……?七志乃に嬉しいこと……?
この数分間で七志乃さんに嬉しいことなんて……
「俺のことを、『綺麗』と、アオサギ……お前はそう、言っただろ、」
「――で、でも、その言葉は――」
――七志乃さんの慰めにすらならなかった、と続けようとした時だった。
「『物』の話を、最後まで、聞け……」
オレの言葉を制するように、七志乃はそう、言う。
その一言で中途半端に開いたオレの口を閉じた。
「今まで、俺の容姿を、ただ……綺麗だという人間は沢山いた。珍しがる人間も、沢山いた。
……だがそいつらは、
俺に、長袖の服を着せ、『その関節を隠せ』と、
俺を、蝶の標本のように、縛り付け、『動くな』『決められた動きだけしろ』……と言うのだ」
遠い昔話をするようにゆっくりと話し始める、その七志乃の表情に、少し、曇があった。
「……俺は感情と似たものを、持って生まれてきた、が、そいつらは、俺に『感情を封じるように』、と言うのだ。
――だけど……」
――話の最中、七志乃は突然こちらに両手を伸ばし、オレの手を捕まえて指を絡ませた。
……恋人繋ぎ、というものだ。
その愛らしい行動に、不覚にもドキッと心臓がバクついてしまう。
「――アオサギ、お前は俺の、この、歪な関節を『綺麗』と、言い……お前はこの、人間の様な、立ち振る舞いを『綺麗』と、言ってくれた。
そう、言ってくれたのは、この世で、俺の父親(製造者)と、お前、だけだ……。
だから俺は、嬉しかった。
――だから、笑ったのだ」
ギュッと恋人繋ぎの手を強く握りしめられた。
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