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人間の本音2
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――人形とは思えない肌の温もりが掌越しに伝わってくる。
「七志乃、さん……」
その温もりに反応して心臓が徐々に加速しているような気がした。
「――俺は、俺のことを『綺麗』というお前に、それ以上のことを、求めてしまった。……それがお前を、困らせてしまったんだな」
そう、償うように、七志乃は言葉を紡ぐ。
オレは何も言わずに、黙ってその言葉を聞き入れていた。
……そのままその場に少しの沈黙が流れる。
「――――ところで、だ、アオサギ」
最初に沈黙を破って話題を切り出したのは七志乃の方だった。
「…………結局、なぜ目を背けたんだ?」
幾分優しい口調で問いかけられたが、都合の悪さからか、うッと思わず声が漏れる。
(や、やはりそれは答えなければならないのか……)
「い、いや、確かにさっきは『この質問に無理して答えなくていい』と、俺は言った……。
言ったが……だがやはり気になるだろ……ッ」
そう言い切って、ギュッギュッと更に強く握ってくる七志乃の手。
そして「さぁ答えろ!」と言わんばかりの七志乃の顔つき。
なんとか誤魔化そうと軽口を開こうとすると、キッと七志乃は睨みつけるようにこちらを見えきた。
「――――ッ……」
オレはその視線に怯んだのか、一瞬口を閉ざしてしまう。
――そしてたった数秒間の間を置いて、オレは唾飲み込み、覚悟を決めるように再び口を開いた。
「…………え、エロティックだからです」
「――――え?」
七志乃はオレのその言葉を聞いた途端に一気に表情を変える。
『軽蔑』の表情をされると思ったが、七志乃の顔はどっちかと言うと『困惑』の表情をしていた。
「いやー、七志乃さんの、身体のあらゆる部分がエロティック過ぎたせいで興奮しかけて、つい、顔を背け――――って、あ、」
その困惑した七志乃の表情が意外と可愛かったのか、不覚にも言わないでおこうとした余計な事が、口が滑って出ていってしまった。
(――――……い、言い切ってしまったーーー!!)
無意味だと知りつつも、慌てて片方の手でこの口を抑える。あとの方からじわじわと、恥ずかしさと後悔が湧いて出てきた。
「……え、えろ、ていっく…………?
……こうふん、しかけて…………?」
七志乃はボソリとオレの言葉を繰り返す。
その顔は明らかに『困惑』の他に『動揺』も混じっているようだ。
「――た、確かに、俺は人の手によって作られたから、それなりには、容姿に自信があるッ……。
さっきも言ったが、綺麗とか、美しいとか、それは良く言われていた。た、ただ……え、『エロティック』……とか『興奮した』とはその…………」
言葉を途中で止め、一旦頭の中を整理しようとしたのか、突然目を伏せる七志乃。
そして再び開いた目には、まだ困惑の色を残していた。
「……その、あまり言いたくないが……アオサギ、お前……『異常性癖』でも持っているのか?
『お人形さんが好きすぎて堪らないー』とか、そういう類の」
「い、異常性癖?…………いやいや、いやいやいや!!!」
首を横に振って、思いっきり否定する。
そもそも何でそうなるんだ!
オレは至って普通の性癖を持つ、健全な男子大学生と自負しているのですが……!
「お、オレは超健全ですよ!!七志乃さん!
そ、それに『エロティック』と言ったのはその、そう!、芸術的な意味での褒め言葉ですよ! 決して下心丸出しの言葉ではありませんよ!」
必死に弁解を述べようと慌てて、自分でもよく分からない事をボロボロと吐き出していく。
「……お前は下心ナシの褒め言葉であそこまで顔を逸らすのか」
グサァ、と七志乃さんの一言が胸に突き刺さる。
痛い。今のは痛い。
「――その、アオサギ、一つ、確かめさせてくれ。
……俺は身体だけならお前と『同性』の関係、ということになる。俺の上半身と下半身は、男性を、モデルに作られているからな」
七志乃は一息を置き、切り出した話を続ける。
「お前は、俺を『エロティック』だとか『興奮しかけた』だとか言った。
その言動はもし、俺がお前と『異性』の関係だったら、この事を俺は、すんなりと理解出来た……かしれない……が、」
――ああ、つまりあれだ、七志乃が何に困惑して、動揺してるのか。
「……オレの言動が『同性』の関係に対して相応しくないものだった」
「……そうだ、だから俺は、少し、戸惑った……」
七志乃はオレの言葉に頷くと照れるように俯いた。
「そ、それに、それが、イヤという訳では無く、むしろ嬉しかった……気が、した……」
ボソリと、オレに聞こえるか聞こえないかぐらいの大きさをで、七志乃は呟いた。
俯いている七志乃の顔をチラッ盗み見る。
顔は赤く染まって…………本当に照れているようだ。
(――――…………か、かわいい……ッ)
その七志乃の一言とその表情でまたもや、チョロいオレの心臓の鼓動が加速しかける。
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