アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
始まり
-
2016年8月 東京
「ゆーうー、あんた15日明けときなさいよー」
クーラーを付けてやっと涼しくなってきた頃、母さんの俺の名前を呼ぶ声で漫画から視線を上げた。
「15ー?なんで」
近づいて来る足音に顔を上げると母さんがひょっこりとドアから顔を覗かせ、ほらやっぱり忘れてる、と態とらしいため息を吐いてみせた。
「お盆よお盆。今年はお爺ちゃんの13回忌だから従兄弟の弘樹君たちも来るって」
「ヒロキくん…?って俺の4つ上だっけ?会うのいつぶり…」
蝉がこれでもかというほど鳴く今年の夏も例年と同様暑い。俺、小宮裕太(こみやゆうた)はめでたく受験生の夏を過ごしていた。
高校生最後の夏といえど、受験生の俺にとっては勝負の夏だ。(と言いつつ俺が今広げているのは漫画なわけだが)この夏休みの過ごし方が明暗を分けると担任が繰り返していたっけ。
机の上に山積みになったテキストに視線をやれば、はあ、と大きなため息を吐いた。
「お盆かー」
うちの家族は毎年行事ごとをきっちりこなしているわけでも無く、親戚一同が集まるのは稀だった。離れて暮らす従兄弟との関係も希薄で、正直特に思い出も何もない。年賀状のやり取りがある程度で最後に顔を合わせたのは6年前になる。
6年ぶりに会う従兄弟。身内であってもそれほど仲良くもなく、友達というにも何か違う関係は接し方がいまいち掴めなくて少し苦手だ。
「悪い、15日花火いけなくなったわ、っと」
高校の友達数人のグループラインにメッセージを送信し俺はまたベッドに寝転がった。
「3巻まで読み終わったら勉強」
そんな平凡で退屈な俺の毎日に「お盆」がやって来る。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 3