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君の隣りにはいれなくて1
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ジリリリリリリ…ッ
ベルのけたたましい音が学校中に響き渡り、生徒達へ争奪戦の終了が知らされる。
散り散りになっていた生徒はそれぞれの攻防を止めると、一斉に校庭へと移動を始めた。
思い思いの感想を述べる同級生に紛れ込みながら、俺は誰と絡むでもなく一人無言のまま集合場所へと向かっていた。
足を止めることなくぐるりと周囲を見渡すと、初めて顔を見るような連中がくだらない話をしながらあちこちで笑っている姿が目につく。
雰囲気は悪くない。
クラスの団結と他クラスの奴らとの交流。
確かにこの様子からするとコミュキャンをした意義があったように思う。
それぞれの表情は様々だが、しかしみんな気分が高揚しているのか、朝に比べてテンションが高いように思えた。
そんな人の群の隙間から不意に赤いチャイナ服が見えてドキリとする。
佑真?
だがそう思った次の瞬間、それが全くの別人だと分かり、がっかりしている自分に鼻白んだ。
結局時間内に佑真と遇うことはなかった。
赤い服を見る度に意識してしまうのは気になっている証拠だということはわかっている。
柚流が言っていたことも気になった。
まさか敷地内に鳴り響いた合図を聞き逃しているなんてことはないだろう。
やっぱり何かあったのか…?
結局すっきりしないまま校庭に着いて、クラスの連中に混じりながら流れるように列の後ろに並ぶまで、佑真の姿を見ることはなかった。
何気なく前を向いて、前方に僚の姿を見つけてようやくホッとする。
あぁなんだ、先に来ていたのか。
僚がいるということは、もちろん隣りには佑真がいるはず。
そう思って斜め下に視線をずらせば、予想した通り僚に添うようにして立つ佑真の姿が見えた。
ただ今までに無い二人の距離感にピクリと眉が跳ね上がる。
その表情はぎこちない。
佑真…?
色白の肌によく映えた、頭上に咲いていたはずのバラの髪飾りは奪われてしまったのか既に無く、赤いドレスはジャージに変わっていた。
それだけではない。
よくよく見れば僚を見上げて細められた佑真の瞳が赤い。
明らかにおかしいその様子に違和感が拭えない。
更に視線を下げれば、手首には湿布とそれを固定する為のネットが巻いてあり、“何か”があったことは明白だった。
嫌な予感に急激に鼓動が加速する。
このゲームの間に一体何があったというのだろう。
僚は…多分知っているんだろうな。
風がザッと木の葉に吹き付けたように一瞬胸の内がざわついて、気づくと俺は佑真の元へ吸い寄せられるように歩みを進めていた。
「お疲れさま」
近くで改めて佑真を見る。
やはりその目は赤く、泣いた後のように少し腫れぼったい。
俺に気がついた佑真は一瞬その瞳を大きく見開くと、フイッと気まずそうに視線を外した。
明らかに動揺している様子に無言で僚に答えを求めるが、僚の表情は変わらずただ俺をジッと見据えているだけで、解決の望めない様子に俺は詰まった息を静かに吐き出した。
「佑真、何かあった?」
仕方なく直接本人に尋ねてみる。
しかし佑真は「何でもない…」と小さく首を振るだけで、それについても僚は何も言わなかった。
ただ庇うようにして立つ僚のその瞳は優しくて暗い。
そんな僚の態度に今度はハッと息を吐き捨てて、俺は小さく笑った。
傍目には分からないその微妙な変化に気づいてしまったのだ。
何年一緒にいると思ってるんだ。
じりじりと俺から逃げるように身を引く佑真。
そして無言で俺に圧力をかける僚。
あぁなんだ、そういうことか…と、意外と呆気ない幕切れに腹の底からクツクツと抑えの利かない笑いが込み上げてくる。
馬鹿な自分への卑下た笑い。
でもそれを表に出すことはない。
勝手に葛藤して勝手に自分で思い知ったのだ。
成るようになった、それだけじゃないか…
俺はすっかり身体に染みついてしまったつくり笑いを顔に貼付けると、「大変だったね、、おつかれさま」と佑真に向かって微笑んだ。
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