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「涼。そんなに飲んだら体に悪いよ」
「んー…平気平気」
「もー…」
膝の上に座らされ、机の上に広がる豪華な食事を俺が食べている後ろで、どんどんビールの缶を開けていく涼。
今開けたので4本目くらいだと思う。
「酒ばっかり飲んでないでちゃんと食べ物も食べなさいよ」
「今は昴流の食べたい気分」
「ええ…。沢山あるじゃん」
「…昴流のがいい」
早くも酔いが回ってきたらしい涼がうりうりと背中に額を擦り付けてくる。
甘えてくる涼は可愛いけど、俺の料理の方が良いって言ってくれたのは嬉しくなかったって言えば嘘になるけど、すっごく嬉しかったけど…。
初めて来た家の台所を借りる程の度胸は俺にはありません。
「ほら、この煮物美味しいよ?」
「…ん」
甘く煮られた里芋を箸で摘まんで涼の口元へ運ぶ。
それをもきゅもきゅと食べる涼に「美味しいでしょ?」と聞けば「昴流の味の方が好み」と返され、そこで完全に涼に負けた。
「…作るのは1つだけだからね」
「ふふ、大好き昴流」
酒一杯飲んでるから何作ろうか。…それよりもまずキッチン誰に借りるって言えば良いんだろう。雪路さん、かな…?
「雪路さん」
「んあ?どした?」
同じ年くらいの人と飲んでいた雪路さんに声をかけて、キッチンを貸して欲しいと頼む。
と、あっさり許可を貰えてた。
「わかんねえ事があればそっちにいるやつに聞けば良いぞ」
「ありがとうございます」
「良いよ台所くらい」
キッチン、人いるのか…邪魔にならないように隅でやることにしよう。
「じゃあ、ちょっとだけ待ってて」
「ん」
よしよしと涼の頭を撫でて立ち上がると、台所の場所が分からないので雪路さんに案内してもらう。
案内してもらわないと場所が分からないとかやっぱこの家無駄に広い…。
「涼はいつもあんな感じなのか」
「あんな、とは…?」
「…ひっつく?」
「ああ…」
台所に向かっている途中に、そんなことを質問され「そうですね」と答える。
何でそんなこと聞くんだろ。
「…否、あいつがあんな風に誰かに引っ付いてんのを見たのは初めてだったから驚いてな。昴流君が言ったあいつの好きなところも俺の知ってる涼とは違って半信半疑でさ。さっきのも酔ってるだけだと思ったんだが…そうか」
「ん…、わ…っ、何ですか…?」
「ありがとな」
「…?はい」
わしゃわしゃと雪路さんに頭を撫でられる。
優しく微笑む雪路さんは、全く血の繋がりがないのに、父さんの笑顔に似ていた。
…嗚呼、知ってる。これは"父親"の顔だ。
雪路さんは涼の叔父だけど、中学、高校の時涼はここに住まわせてもらっていたと言っていたから、涼にとって雪路さんは第2の父親のような存在で、雪路さんにとっても涼は息子のような存在なんだろう。
礼の意味は深くは分からないけど、それはきっと、"父親"としての言葉だったんだろう。
「ふふ」
「どうした?」
「いえ…、賑やかな所も悪くないと思っただけですよ」
俺は涼と違って親戚との繋がりとか全然分からないし、従兄弟がいるのかも分からない。
母は亡くなって、男4人だけの小さな家。つい最近までは2人だけだった。
それだけで十分だと思っていたけれど、大きい家も、沢山の繋がりがあるのもそれはそれで良いのかもしれない。
「じゃあ、来年もまた来なよ。それか正月にでも。正月も集まるからさ」
「良いんですか…?」
「だってもう家族みたいなもだろ昴流君も」
「…ありがとうございます」
そう思ってもらえていたのが素直に嬉しかった。この人は、涼の家族は俺らの関係を認めて、応援してくれているんだと身に染みる程よく分かって。
俺、ここに来て良かったかもしれない。
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