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「そんな隅でしなくても良いのよ?」
「そうよ、広いんだから」
「ほらもっと真ん中に来て」
「わわ…っ」
キッチンには料理担当のお母様方5名が居て、広い家同様俺の家の2倍はある大きいシステムキッチンなんだけど、真ん中でするのも悪いなあ、思ってはしっこでやってたらお母様方に引っ張られ、左3人右2人ずつで挟まれる。
余計やりづらくなったのは言わない方がいいかな…。
「あ、の…小さい鍋って…」
「鍋?嗚呼、はい」
「ありがとうございます」
キッチンの収納スペースにあった、1番小さい鍋を受けとる。
「何作るの?」
「あ…雑炊です。雑炊なら水分とか、色々取れるんで」
「ちょっと聞いた?」
「涼君羨ましいわー」
「うちにもこんな気が利ける旦那がいてくれたらよかったのに」
「息子でも良いからうちに欲しいわ」
「ほんとねー」
「え、あの…」
聞かれたから答えただけなのになんだろうこの盛り上がり具合。全国のお母さんってこんな感じなのかな。俺には分からない世界だ。
「あ、野菜ここね。それから調味料とかはここだから好きなように使って?」
「あ、はい。…えっと…ネギと大根と…白菜も使って良いですか?後お米と卵も…」
「そんなに遠慮しないで!ほら一杯使って良いわよ」
「あ、ありがとうございます…」
1人分だから半分くらい切られた奴で良かったのに、手を全く付けていない状態の3つの野菜を渡される。卵も4個も貰った。ご飯は炊飯器まるごと。そんなに要らないんだけどな…。
「にしても涼君すっごい変わったわよねー」
「ほんとよね」
「…?そんなにですか?」
「そりゃあもう!」
ネギを切っているとお母様方の話題は涼に。
…そんなに言うほど変わったのか。俺、今の涼しか知らないからなあ…。
「なんと言うか、昔は誰とも馴れ合わない、って感じだったわね」
「暗いって訳じゃなくて…、進んで1人でいるのを好む子だったわ」
「こうやって集まっても最初いるだけですぐにふらーっとどっかに行って深夜になって帰ってきてたわね」
「今よりも口調がきつかったわね。…自分以外はどうでも良いって感じ?」
「へー…」
「嗚呼、それとあまり人が作ったものを口にしようとはしなかったわね」
「えっ…」
どれも今の涼では想像できないな。
俺と会う前は真逆だったっていっても過言ではない位に、俺が知ってるのとは全く違う人物像。
誰かが作ったのを食べようとしなかった…なんて、そこまで違うとは思ってなかったけど。
俺が作ったのは一杯食べてくれるのにな。
潔癖…とは違う。バレンタインで嫌なくらいにチョコを貰ってたって言ってたから、そういうのがあって他人が作ったものに抵抗があったのかな。
1人でいたがったのもそういう理由なんだと思う。
「それと、涼君年下があまり好きじゃなくて…ほら小さい子供が多いでしょ?」
「嗚呼、5人くらい居ましたね」
「そう、だからそれを理由に最近は全くこうやって集まっても来なかったの」
…へえ、涼年下苦手なんだ。今日小さい子に引っ付かれても笑ってたのにな。
苦手な理由は…自分の話を聞いてくれないから…とか涼なら言いそう。
「でもそれが去年ひょっこり顔を見せて、子供達と笑って遊んでやってるの。彼の笑顔を見たのなんて久しぶりで最初別人かと思っちゃったわ」
「聞けば恋人が出来たって言うじゃない!」
「好きな子が出来たら人って本当に変わるのねー、ってその時思ったわ」
去年。俺と涼が付き合い初めて間もない頃。
涼は俺と出会ってから変わった…のかな。俺が気づかない速さで少しずつ。
あ、俺にも気づく変化はあったな。変態度が増したこと。…それは関係ないか。
俺が変わることができたくらいに涼は俺にとって大切な存在で、涼もつまりは、俺と同じって思っても良いんだよね?…嗚呼、そうなら凄く嬉しい。
「昴流君、私たちからも言うけど涼君を宜しくね」
「はい」
ねえ、涼。俺らはもっと変わっていけるかな。
もし出来るなら2人一緒に変わっていこうね。
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