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開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。
ヘッドバンドをつけて髪を上げた日本人体型とは思えぬ高身長の、味方に指揮をとってるそいつを見て、臣と一緒になって呆然とする。
だって、仕方ないだろ。
親からも図体と中身が合ってないと言われていた奴が、こんな風に声を張ることなんてこの2年間一度も見せたことがなかった奴が、人が変わったように龍へと変貌を遂げてるんだから。
「…あれ琉生ちゃんの生き別れの双子とか?」
「……だろうな」
その驚きと言ったら現実逃避したくなるレベルだ。
琉生が、琉生じゃない。俺らの知ってる琉生じゃない。あのハムスターな琉生は何処に言ったんだ。威圧感があり、でかい体をでかいとは思わせない、自由自在に動かすそいつを俺らは知らない。俺らが琉生を驚かすつもりだったのに俺らの方が既に驚いてる。
「琉生君普段と違いすぎない?」
「ギャップって奴?」
「本当イケメン」
隣から聞こえたその声が、現実逃避に歯止めをかける。だよなぁ、やっぱ琉生だよなぁ。認めたくねぇけど琉生なんだよなぁ。
もうここまで来るとギャップを通り越して涼と同じで二重人格を疑うぞ。
ーピーー…ー
ぽかーんって魂が抜けた状態で龍に化けたそいつを眺めているとホイッスルの鳴る音。それを合図に中に入っていく人もいれば体育館から離れていく人もいて、そこで我に返った。
いつの間にか試合は終わっていたらしく、休憩をとってるハムスターのドッペルの周りには先までここで応援していた女子が集まってる。
琉生はどうやらモテるらしい。今の今まで忘れてたけど、バレンタインとか結構もらってたもんな。そうか、琉生ってモテたんだな。
とりあえず、ここで立ち止まっててはあれなので、気持ちが整理できないながらも体育館に入り、琉生に近づいていく。
女子に囲まれてる琉生は俺らのことに気づいてないようだ。何やら差し入れをもらっているようにも見える。
「…あれ、昴流じゃん。え、臣も一緒。何、どうしたの?」
それでもこの琉生が、ハムスターの琉生なのまるで違う琉生なのか、そう思うと話しかけようにもかけれないでいると、俺らが声をかけるよりも前に琉生が気づいて、名前を呼ばれた。
普段のほんわかした琉生の声に、2人揃って安堵の溜息。良かった、これは俺らの知る琉生だ。
「見に来てくれたのか?えー、マジか…。ちょっと待って俺今汗やべぇから。…館川~バンド新しいの鞄から取ってくんね?」
「はいよ」
館川って人ー確か、俺のクラスにそんな奴がいたーにリストバンドとヘッドバンドを投げ渡し、新しいのを受けとるとそれをはめ直す。まだほんのりと寒いこの季節に汗をかくってすげぇ動いたんだと思う。ちょっと見ただけでも走りっぱなしだったし。
「来てくれんなら言ってくれたら良かったのに」
「サプライズ…?」
「逆に俺らが驚かされたけど」
「…そんな驚くことあったか?」
あっ、こいつ、自分の変わり様に自覚がない。そりゃあもう、な。普段のお前を知ってたら別人かって位に違ってたからな。俺ら驚きを通り越して放心してたからな。
「琉生ちゃんバスケしてる時人変わりすぎだろ」
「そうかぁ…?…なぁ、俺そんなバスケやってるとき変?」
本当に無自覚らしく、近くで休憩していたチームメイトにそう尋ねる。その人たちも俺らと同様出した答えは「yes」。そうだ、そうだろうよ。
「うっそ~…。俺そんなつもりねぇんだけどなぁ。何か恥ずかしいなそれ…。忘れて」
「否、ちょっとそれは無理」
あれほど衝撃的だったことを忘れるだなんて頭うって記憶喪失にならない限り無理だ。
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