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集会が終わり、俺らは教室に戻ることに。隣でめそめそと琉生がしてるのは自分だけ補欠が多いせいだろう。しかもそれは全部涼の提案と来たもんだ。終始涼が私情を挟んでいるのは気のせいではない筈だ。だってこれ琉生弄るのが楽しいから、とかそう言う理由だ。
「何で俺だけ…」
「や、ほら椿がルイちゃんへの期待と言うか…」
「本当にそう思ってる?」
「…否?」
「ほらな!!!」
フォローしてやりたいがその言葉が思い付かない。涼が琉生の反応見て楽しんでたのは確実だし?
「なぁなぁ狂ちゃ~ん」
「…?」
会議室を出る直前、先まで同級生といたそいつに名前を呼ばれる。何だと問えば「先の続き」と言われる。先の続きが何なのか思い出せず記憶を遡ってみる。
先…前していたこいつとの会話の内容。…は確か、集会のこと。どんなことをするのか、とか。どんな種目を決めるんだ、とか。
「俺体育祭すんの初めてだからさ。二人三脚ってどうすんの?足引っ付けねぇといけないんだよな?何で引っ付けんの?後障害物って何?」
多分、自分が出る種目なのであろうそれらの内容を聞いてくる。言葉のまんまだろってのが回答…なんだが、それ以上に気になる発言があった。
「初めて?」
そう、『初めて』。中学の頃あっただろうに。否、俺だって体育祭とかそう言うイベントサボってきたけれども、人のことは言えないけれども。
「俺中学行ってねぇからさ」
「…へー」
サボってたんだろう、きっと。最初高校進学せずに就職を選んだくらいなんだし。別にそこに対して追求する気はないから適当に相槌を打って説明してやった。
「へぇ、おっけサンキュー狂ちゃん」
「ん」
障害物リレーとか俺出たことないし、見た記憶での説明になってしまった部分もあるけれど、理解はしてくれたらしい。まぁ、全部そこまで難しい種目ではないし、イメージさえ掴めたら後はどうにでもなるだろ。
「二人三脚は俺の華麗なチームワークって奴で1位になるから」
「お前だけが1位になってもリレーだぞ…?」
「んん…アンカー?」
ペアごとのタイムを競うんじゃあなくてリレー、共闘だ。お前1人の順位で総合順位が決まる訳じゃないぞ。その自信には期待しといてやるけども。華麗なチームワークってので頑張れ。
「まぁ、俺周りに合わせんのとか結構ー……」
ーピリリリ…ー
「結構得意だ」と言い終わる前に、それを遮るように鳴り出した通知音。俺の携帯のものではない。愁と琉生のでもないらしいので、消去法で朝生田ってことになる。朝生田に視線を送ると、朝生田が携帯を確認して「悪い」と俺らに謝って電話に出た。画面を確認した時、朝生田の顔が一瞬、表情をなくした気がした。
「昼は緊急時以外連絡してくんなって言ったよな。なァ?」
気がした、んじゃない。やっぱりそうだったんだ。電話に出た朝生田。電話相手に口を開けば、そいつの顔から表情は抜け落ちた。どうしてかは分からない。殺気を向けられた訳でもないのに纏うものが変わった朝生田にぞくりと背が震えた。危険だと、直感的に感じ取った。
「切るぞ。今手が空いてない」
冷たく、抑揚のない声で、言葉を吐き捨てていっているような淡々とした朝生田の態度。それを目の当たりにして舞那ちゃんの言っていたことが間違いではないんじゃないかと言う考えが過った。
朝生田はそのまま、話があったのであろう相手の用件を聞くことなく無理矢理電話を切った。携帯をポケットにしまい、俺らに再び見せた顔には、笑顔。気味の悪いほどに、何もなかったかのような笑顔。
「めんご、ちょっとごたついててさ」
「あ、あ…」
ごたついてる、そんな言葉で片付けれる雰囲気ではなかった。嘘をついてるのは分かりきってる。が、聞いたって、今言わないんだからどうせはぐらかされる。それを分かっているから詮索はしなかった。
「んじゃ狂ちゃん、ルイルイ…と、悪魔さん。俺教室戻るわ。色々と教えてくれてあんがと~」
1年の階へ着くとにこにことその笑顔のまま手を振った朝生田と別れる。結局朝生田が一体誰と電話したらあんな態度になるのかは分からないまま。謎が絶えない奴だ。
けど、更に不思議なことに、翌日朝生田が俺らの教室に来ることはなく、その次の日も、その次の日も。今までのことが嘘だったかのように赤潮わかめの訪問はパタリと途絶えることになる。
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