アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
、
-
「あの糞狐が」
そして、乾いた笑い声が止むと今度は殺気を込めて吐き捨てられたそれ。狐って誰のこと?俺?俺…ではないよな。だって「あの」って指示語は俺を指してることにするには対象が遠すぎる。ここにいない誰かに対して使うのが適当だろう。
「お前さァ、どっかで見たことあるような雰囲気だとは思ってたんだよなァ…。今、やっと。思い出したわ」
「あ?……っ゛」
急に殴りかかられ、反応が遅れた俺は受け身をとるのがやっとで、ビリビリと腕が打撃に痺れる。それに対して、男は笑い「"それ"だよ」と俺が瞬時にとった対応を指摘した。
「てめぇの、それだよ。反応の良さだよ。違和感はあったンだ。空手やらなんやらやってたにしてもお坊ちゃんにしては"良すぎる"」
「…だから?」
「っふは…、しらばっくれんのは止めようぜェ?"わんちゃん"?寝転がってる方の奴は悪魔って所かァ?」
もしかして、と思いながらも発言の狙いを聞いてみると、悪い意味で予想が的中した。
たかが、喧嘩のスタイルだ。俺と似たような動き、受け身の取り方、かわし方、殴り方。攻撃のしかけ方。そんなやつどこにでもいるだろうにどうしてこいつは、どうしてピンポイントで当ててきた?しかも、確認ではなく『確信』している。俺が、「わんちゃん」――『狂狼』だということに絶対的な自信がある証拠だ。もしかして、顔を知られてたとか…?朝生田が話してた感じでは、1回は中学の時ここのセットと喧嘩したみたいだし。それでか?
「変わらねェなぁ…。っクク…、人をおちょくる態度っつーのォ?お前の糞マイペースなとこが、最高にムカついて最高に"良い"」
「……あ?」
何だこれ。俺今貶された?それとも褒められた?言い方的に貶してるよな。何で俺こいつにディスられないといけないんだろ。や、これ煽った俺が悪いのか?
「そう言やァ、何時だっけかァ…?去年の秋ィ…?サブがお前勧誘してただろ」
「…あ?秋?」
秋?秋ってなんかあったっけ?学校行事で言えば文化祭とか?文化祭……あ、あーーー。文化祭前にあったな。俺リンチに遭って車椅子生活強いられたんだった。そんでもってその時族に入れって勧誘もされたな。思い出した思い出した。この言い方からしてあのときの『赤』と同じってことか。
えぇ…。朝生田は俺への報復をセット内で計画しているとか言ってたけどもう既に十分されてんじゃん俺。凄ぇ恨まれてんのなぁ…。俺そこまで根に持たれるようなことした記憶ないんだけど。
「けどお前のその糞ムカつくとこもある意味では評価しててよォ」
「はぁ」
そんなとこ褒められてもちっとも嬉しくないし、俺は今逆にお前にムカつきそうだけどな。て言うか褒められた気がしねぇや。
「だからそん時は勧誘した訳な。狂った奴は大歓迎~。でもそうじゃねぇなら、後は用無し。くたばれ糞犬…っつー訳だっだけどォ、まァサブも言ってたことだろうしさァ、別にそこは改めて言う必要もねェか」
「…俺は今、また勧誘されてんのか?」
話が見えてこないので、こちらから質問することに。
また勧誘されてるんならどうしようか。こいつら何度も俺に絡んできてる時点で諦め悪いし、可能性はあるよな。そんで、前と同じ返答をしたら同じ道をたどるんだろうか。それは避けたい。
「ンー…否、今回は良いかなァ…。丁度悪魔の方もいるんだしなァ…。当初の目的を果たす、っつーことでェ…やるぞ"お前ら"」
少し音量をあげてされた呼び掛けに、ガチャリと扉が開いた。扉前で待機していたらしき青年3名が部屋に入ってきた。てことは例えこいつを倒してたとしても、楽々と逃げることはできなかったのか。うーん、でもこのボス格が一番面倒そうだから数増える前に倒しときたかったなぁ…。
…何て、文句言ってられないよなぁ。とりあえずボス格残して弱そうな奴から倒していこう。先こいつとやりあって攻略法は見えてきた。愁を守りつつ頑張ろう、俺。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
904 / 1113