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「へェ…可愛い声だせんじゃん?」
「あっ…?!ぁ、ぅ…」
ピンッ、と乳首を弾かれてひくん、と腰が震える。勃つほどじゃあないけれど、それでも腰にびりびりと何かが伝わってくる感覚が嫌で、嫌で。同時に羞恥すら覚えた。
「…あんま深く考えずに身を任せた方が楽だぞ」
「っや…、嫌、だ…っ!離せ…!」
「"こうなっちまったら"今くらい楽しんだ方がお前の為じゃあねぇの」
「っん、む…?!」
「……ヒュー。やるなァ…結構乗ってんなお前」
ツキに触られるのが嫌で、可動範囲が狭い体を必死に捻って抵抗する。抵抗を止めて、不快感からも逃げて、思考回路すらシャットダウンさせて。そうやって快感に身を委ねるのは確かに楽かもしれない。けれど俺にはその『自我』を捨てることがどうしてもできなくて。この瞬間は良くても絶対後悔するから。だからそいつの言うことを拒否したら溜息。次の瞬間、唇に何かが触れ、塞がれた。
下唇が何か柔らかいものに挟まれる。その感触から逃げるように顔をそらす。しかしすぐにまた捕らえられて。
ーなんで、"キス"なんか……ー
ヘテロが、何なら一番気持ち悪いだろう行為をやってくる。しかも乱暴にではなく女ーー『恋人』にやるみたいに、丁寧に、優しく。憎んでる相手、これからレイプする相手に最も矛盾している行為をしてくる。今までのは、何か目的があったのかもしれない。ーあったとしても理解しがたいけれどーこれはもっと意味が分からない。だって絶対俺ならできない。乳首触るより何倍もやりたくない。
「ん、ん…っ、ゃ…」
「…許してくれとは言わねぇけどな、俺らにとってはここが全てなんだ。悪ィな」
「ぇ、な…?」
ー何だよ、それー
俺が抵抗し続けると、諦めたようにツキの顔が離れていく。それに安堵しほっと息をついたその時、ぼそりと、俺にだけ聞こえる声で呟かれたそれ。ツキと言う男は相変わらず無表情でーて言うかここにいる奴ら大体目しんでるー、何を思ってそう言ったのかは見当もつかない。
「ここが全て」則ち、この族って存在がこいつらの全て。その為なら何でもする、そう言いたいのか。こいつらの価値観は分からない、分からないけれどどうしてかこいつの目を見ていると昔の俺を思い出してしまう。
暗闇から抜け出せない、一歩前に踏み出せない。こいつらにとって『族』って存在があの時の俺にとっての愁のような存在ならば、こいつらが昔は純粋だったのかなんて興味はないけれど、少なからずこいつらをこんなにも歪ませた元凶でもありそうなその存在に、恐怖すら覚えた。
俺も、こんな風に見られていたのだろうか。愁に、喧嘩に依存していた俺への評価は、今俺がこいつらに抱いているものと同じだったんだろうか。
ーそりゃあ、恐がられるよなー
俺が無防備なやつに何もする気が無かったんだとしても、自分で怖いって、思っちまったんだから周りはもっと怖かったに決まってる。今思えば、兄さんや父さんは、そうなっちまった俺とどう話せばいいのか分からなかっただけなのかもしれない。俺がどうすれば耳を傾けるのか悩んでいたのかもしれない。
今、わかったところでもう過去はやり直せないけれどそんな俺にずっと付き合ってくれてた愁には感謝しかない。幸仁さんも吏さんも、何言ったって耳を貸さない俺にずっと怒ってくれてて。優さんや要さん、兄貴だって、ずっと見捨てないでいてくれた。こいつらには、俺が立ち止まれたように、ブレーキになってくれてる人がちゃんといるんだろうか。
こいつらの生気のない目。復讐に拘る俺らへの執着心。それから、『赤』がこいつらの中占めている割合。俺がそれらで思い浮かんだ言葉は『特攻隊』。
『赤』のためなら"しねる"、『赤』のために命が果てたって構わない。俺はどうにもこいつらがしにに行っているようにしか見えない。裏を返せば、『赤』って存在がこいつらの"命"にすら等しい価値を持っていることを思い知る。
…なら、朝生田とは。どうしてこいつらは揉めているんだろう。朝生田もこの場に執着していたようにも見えた。例え思いが向くベクトルは違っても、根本にある「"ここ"が自分の全て」って気持ちは一緒のような気がするのに。…なんて、俺が今気にしてやる必要はないんだけども。
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