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「どうすりゃあいいんだ俺は…」
予期していなかった目の前の状況に俺はそれしか言えないでいた。
数分前に授業参観と保護者会のプリントをS.H.R.に生徒に渡した。
そのプリントの期日とか事務的に話しているといきなり狼が立ち上がって、そのまま教室を出て行った。
誰から見ても出ていく際の彼の様子はおかしく、気になったのですぐにS.H.R.を終わらせて屋上に向かった。
昨日鍵開けてサボってたし、そこにいるんじゃないかって思って。
走っていったあたり、やっぱ惚れているんだな、って思った。
誰かの為に走る、なんて今までにあっただろうか。
で、いってみたは良いけど鍵は開いてなくてその代わりに隅で丸まっている狼がいた。
…昨日鍵を開けれていたのに、開けていないってことは、鍵開けたのは魔咲の方なのだろうか。
声をかけようとしたが、こいつの呼吸が変であることに気がついた。
細い、って言うか不規則って言うか。
様子を確かめる為に同じ高さになるように足を曲げた。
肩を揺さぶろうとして、そして、気づいてしまった。
呼吸が正常に出来ていない原因に。
「何してんだお前は…!!」
それで咄嗟に狼の両手を掴んで、怒鳴った。
だって、有り得ない。
正直、それが信じられなく嘘であって欲しいと思ったが赤くなっている首が、先まであったことを物語っている。
こいつは、絞めていた。自分の首を。
けれどは当の本人は自分が何をしたのか理解していないようで、怒鳴る俺をキョトンとした顔で見てきて、また怒鳴ってしまった。
…嗚呼、怒鳴ってばかりじゃ駄目だ。冷静になろう。
首を絞める、自傷行為…ピアス。
そう言えば、ピアスの件で気がつけば開いていた、って言っていた。
てことは、まさか、こいつ"無意識"にそういう行為に走ってしまう…ってことか?
予想していなかったことの連続で、頭が追い付かないでいると、狼が俺に抱きついてきた。
いきなりのことで驚き、硬直してしまう。
「寒い…欲しい…」
どうしたんだと彼の様子を伺っていると、こいつは何度も何度も繰り返しそう言った。
春だし、ブレザー着てるし、どちらかと言えば暑いくらいろうに。
なら寒いってのは、"心"の話なのだろう。
「どうすりゃあこうなるんだよ…」
家庭内の事とか色々聞きたいことは山々だが、今はこいつが望むがままにしてやった方が良いと思って、知りたい気持ちをグ、と堪えて、小さく震える狼を抱き締めた。
ー…守ってやりてぇなー
弱々しい狼を見てその思いが強くなった。
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