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「だーかーーらーーー、あいつは今寝てるって言ってんだろ」
椿の少し切れ気味な声が聞こえ、目が覚めた。
ぽふぽふとベットを叩いてみるが、隣で寝ていた筈の彼はいない。
起き上がり、辺りを見渡すも寝室に椿の姿は見当たらない。…リビングか?
「また後でかけ直せ。何で俺が無理矢理起こさねぇといけねぇんだ」
リビングに行くと俺の携帯で誰かと通話している椿がいた。
俺が寝ている間に電話を取ってくれたのだろう。
「…つば、き」
「…んあ?…おはよ、良く寝れた?」
「…ん。電話誰…?」
「魔咲、お前に代われってしつけぇ」
「…愁…?」
こんな朝から何の用だと思いながら椿から携帯を受け取って、それを耳に当てる。
「もしもし」と代わったことを教えると「ルウちゃん!!」と鼓膜が破けそうな位の音量で名前を呼ばれ咄嗟に携帯を耳元から離した。
「…五月蝿い。何どうしたんだ」
『あ、ごめん。否昨日電話ルウちゃんから来てたのに今日気が付いて、電話したんだけど。…椿からある程度は聞いた』
「あ…や…」
愁のその発言で体が凍りつく。
…聞いたって、何処まで?
相手の事まで?
…それとも、俺が何をしていたのか。椿が知っていること全部?
あの写真のことも、電話のことも、全部?
もしそうなら次に出る言葉は、軽蔑の言葉…?
次の言葉が、怖い。とても。
『…昴流、お前がビクビクしてんのこっちにまで伝わってくるぞ。何をそんなに恐れる?…俺が嫌うと思ったのか?』
けど、待っていたのは冷たいものではなく、優しい声。
いつもの、愁の声。それに体に入っていた力が抜けて代わりに鼻の奥がツン、と痛くなった。
『お前はいつもネガティブ思考って言えば良いの?…お前を1番に理解してんのは俺だって忘れてんじゃねぇよ』
「…っ、ほんと?…俺から、離れない?愁も俺を見放す…ことはない?」
『何でそう言う発想になったのか聞きてぇ位なんだけどな…。俺らの関係は友人とか恋人とか家族とか。そんなお綺麗なもんじゃねぇけどよ、それらに劣らねぇ位に固い物だろ?…だから互いにこれ以上壊れずにやってこれた。たかだかこんなことで切れるようなもんじゃねぇよ。お前俺を何だと思ってんだ』
嗚呼、そうだ。そうだったな。
友人、恋人、家族。
そんな言葉で言い表せない、歪な関係。
自分の為に利用して、相手の為に利用されて。そんな、そんな一言で言い表せれない関係。
それでも、俺たちの間には確かにそれらの関係に劣らない、決して切れることのない固い絆があって。だから、俺等はこの3年間やってこれた。
そして、いつだって愁は俺の1番の理解者でいてくれた。
何でこんなことに頭が回らなかったんだろう。
愁はいつも俺の欲しい言葉をくれるって言うのに。
いつだって愁は俺の味方でいてくれるって言うのに。
愁なら、電話に出ても俺を嫌いにならずにいてくれた筈なのに。
これじゃあまるで、"愁"を否定しているみたいじゃないか。
「ごめん、ごめん…愁、お、れ…」
『気にすんな。…つーかお前それいい加減直せネガティブ思考』
「う…」
ネガティブネガティブと愁に連呼される。
俺、そんなにネガティブ思考だろうか。
『俺からして見ればかなり。入ったらマジて救い様のないネガティブ』
「……む…」
『まぁ…、簡単に直るとは思ってねぇけど精々椿に愛想尽かされないようにしろよ?』
「っは?」
さらっと、それはもう呼吸をするかの如く自然に。
愁から言われたそれに驚きで体がピタリと硬直する。
この言い方からしてこいつ椿と付き合うことになったの…知ってる?
え、は?ちょっと待て。いつ知ったの?昨日の事だろ?
流石にこいつの目を持ってしてもエスパー紛いなことは…
『は?何言ってんだ、お前が椿と休日に一緒にいる時点で察せれるだろ』
…嗚呼…、成程。それもそうでしたね
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