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「っん……何?」
「いや、何となく」
「…そう…?」
電話を切るとほぼ同時に椿が後ろから抱きついてきた。
何となくと言われたらどう返せば良いのか分からなくて、椿の腕の中で大人しくしていると頬に柔らかい感触。
「…だから何…」
「あいつと何話したの?」
「えっと…気にすんなーとか…昨日の奴の特徴話せ…とか」
「…俺もそいつ、割り出せたら何処の馬の骨か魔咲に聞こうかなぁ…」
「えっ」
椿の笑顔が怖い。愁の笑顔を通り越してる。大魔王の笑み?
椿もそいつに何かすんのか?否、だから俺等にも非があるんだって。
「昴流の可愛いお尻切らせて許せれると思う?やるとしてもローションは使うよなぁ。童貞かよ」
「ええっと…」
「まだ痛む?痛むよな、そりゃあ腫れてたし…。…やっぱ俺も軽ーくお話しようかなぁ…」
「あ、の…」
笑顔だけど、目が笑ってない。こんな怖い言い方の『軽く』は初めて聞いたぞ。兄貴の『ちょっと』よりも怖いと思ったかもしれない。…俺の周り、黒い人多い気がしてならない。気のせいであって欲しい。
俺、そこそんなに気にしてないから、落ち着いてくれ。
「そう?じゃあ仕返し、して欲しくなったら言ってね」
や、あの。だから聞けよ。俺等のせいなんだってば。
そこで仕返したらループじゃん。俺向こうのこと恨んだりとかしてないから。
俺等が悪い。俺等のせい。自分がしてきたことの結果なんだから、相手に仕返しとかお門違い。
「しなくて良い。だい、じょーぶ」
「本当は怒っても良いことなんだけどな。…そんな根が本当は優しい子な昴流も好き」
「んぅ…っ」
肩辺りまで伸びている俺の髪に唇を落とし、よしよしと頭を撫でてくる。
小さな子供を褒めるような優しい手つきで、何度も、何度も。
「…他には?最後何か話すとかどうとか言ってた奴」
「あー…それはお前に俺の事話すのか…って」
「…そう、俺は幾らでも待つから話したい時で良いからな」
きっと椿は俺が何ヵ月、何年と話せないでいても待ってくれるのだと思う。
思い出したくないしお前が重たいって言ってどっか行っちまうんじゃないかって怖くて仕方がない。
本当は、この優しさに甘えたい。甘えて、逃げたら楽だと思う。
だけど俺はお前を信じるって決めたから。
「…話すよ、"今"」
俺の事、全部。
お前が知りたいなら、どんなに小さな事でも話すよ。
それが"信じる"ってことだろ?
「…そう、急いで話そうとか思わなくても良いからな。ゆっくり、話せば良い」
「…ん」
「ふふ、大丈夫。ずっと傍に居てあげるから」
俺を抱き締めるのを強くする。話してる間に俺が不安にならないようにそうしてくれているのだろう。
その手と、言葉のお陰で話す勇気が出た。
「…何処から話せばいい」
「最初から。全部教えて昴流のこと。…お前の事もっと知りたい」
思い出したくないこともあるから言うことはぐしゃぐしゃだろうし、省きすぎてるし、ってなるかもしれない。
でも、それでも椿はちゃんと全部聞いてくれて、話し終わった後も椿の俺を抱き締める手が離れていないことを信じて、俺は微かに震える唇を動かし始めた。
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