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茶色と青色。特徴的な髪色をした少年は廊下を走る少年の友人の恋人である男とすれ違った。
男…椿涼が走らなければならない程急ぐ理由が愁は1つしか思いつかなくて何があったのかと声を掛けた。
嫌いなそいつに声を掛けたのは愁の友人…昴流を中心に回ってる涼の頭の中はかなり分かり易いもので、彼が急いでいるということはつまり、昴流の身に何かあったという事だからだ。
案の定、涼が急いでいるのは昴流が原因だった。
詳しく言うとこうだ。
戸締まりしに教室に行ったが昴流の荷物だけあって、幾ら待っても帰ってこないのでまたトラブルに巻き込まれたんじゃないかと思い仕事そっちのけで彼の姿を探しに飛び出した。
生徒とすれ違い際に昴流のことを見なかったかと聞きながら辿り着いたのがここ、愁がサボり場としてよく使用している校舎だった。
もっと言うと、どうやら昴流は最近矢鱈と涼に引っ付いていた久世と一緒にいたらしい。
そして今は1部屋1部屋昴流がいないか見て回っている…とのことだ。
久世と言う名前に嫌な予感しかせず、愁は「俺も行く」と言って菓子袋と化しているスクールバックを持ち直した。
嫌いな、出来ればあまり昴流がいない所で関わりたくない人間と行動を共にする位には、急いでいた。
「あいつのことは流石の悪魔さんも心配なんだ?」
「下手すれば退学物だからな」
「…どう言う意味だそりゃあ」
昴流は精神的に弱い部分があり、些細なことで不安定になりやすい。
久世と2人きりでいてその不安定な状態なるのは目に見えている。
これは久世の良い噂を聞かないからこそ、断言できることだ。
涼が愁に言った心配、とは今そんな状態になっているかもしれない昴流が、という意味だった。
そうなれば、昴流の場合は自暴自棄に走って何をしでかすか分からないから。
だが愁は違う方向に捉えてしまったのか、涼の想像していなかった言葉を返した。
『退学物』。涼が知っている限りでは不安定な状態の彼がそうなる様な行動を取ったことはない。
喧嘩は彼の兄である流星と高校は必ず卒業すると約束したらしいので、考えられるのは自身への攻撃のみでそうなってもおかしくはない他者への攻撃をするとは思えない。
…ならばそれは一体どう言う意味なのか?
「俺が昴流が不安定になっただけで行くわけないデショ。目の前でイチャつかれてもね」
昴流がそれで済むのなら涼1人に任せておけば良い。
昴流がきっと何よりも望むことは涼からの自身の存在の肯定で、後から自分は何か言ってやれば良いのだからここまで急ぐ必要はない。
余計に涼は分からなくなり、なら何でお前は急いでいるのだと首を捻らせた。
「…俺が言ってんのは"その先"の事」
「先?」
「…嗚呼、アンタは見たことないのか」
「最後になったのかなり前の話だもんな」と1人納得。
少し涼にも分かる様に言葉を考える素振りを見せた後に愁は涼に問いかけた。
「昴流の"マジ"切れお前想像出来る?」
…と。
「マジ切れ…?」
「そ。"マジ"」
思いもしていなかった問いに、涼の思考は一瞬静止を見せ、問いに疑問で返した。
愁が「マジ」を強調するからにはただ怒るのとは少し違うのだろう。
…否、ここまで言うのだからかなり違うのだろうか…?
「あいつ、あんま怒らないだろお前に」
「嗚呼…そうだな」
恋人と言う関係になる以前は昴流が涼に切れたことは何度かあった。
だがこの関係になってから昴流は涼に怒りの感情を向けることは無くなって、涼に甘い所さえもある程だ。
「あいつはさ、誰よりも優しい。自分を犠牲にしてでも他人を優先することが出来る位にな。だから心許した人には本当に嫌な事じゃないと怒らないんだよ。…そんな昴流が切れるのは大きく分けて2つ。気に入らない奴に話し掛けられた時か、虫の居所が悪いときに誰かに必要以上に話し掛けられた時。自分がどんなに悪く言われようと、この2つに当てはまらないなら基本怒ることはない」
要約すれば、滅多なことがなければ怒りはしないのだ。
そんな彼が"本気"で怒るのだからよっぽどの事だというのはこれだけ聞けば彼のことを良く知らなくとも分かることだろう。
じゃあその"マジ"とは一体どれ程のものなのか……?
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