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終わりはあっけなく
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薄暗い、理科室の中。
強烈な刺激臭が鼻につき、眉を顰める。
ただ立ち竦む俺の目の前。
壁に背を預けて座り込み、泣きながら自分の体を掻き抱いてガタガタ震える1人の男子生徒。
髪は乱暴されたかのように乱れ、着ている制服はぐちゃぐちゃに切り裂かれていた。
そして俺の足下には、
粉々に割れたガラスの破片や、カッター等の無数の刃物。
その床一面に広がるのは、
毒々しい、赤。
俺の手には、同じ赤を纏ったナイフが、握られていた。
「抑えろ!!!」
この異様な空間のなか突如弾けた怒号に、一斉にバタバタと足音が溢れ、喧騒が耳をつんざく。
俺の手首にドスっと鋭い一撃が入り、握っていたナイフはあっけなく床へ落ちた。
と同時に複数人に強烈な体当たりをされ、俺の体は軽く吹っ飛ぶ。
椅子や卓上の実験器具を巻き込んでガシャンとけたたましい音が響き、俺は実験台にぶち当たった。
「……っ、う……」
あまりの衝撃に、一瞬息が詰まる。
腰あたりに尋常じゃないくらいの痛みが走り、骨にヒビでも入っただろうかと眉を顰めた。
そのまま大柄な男たちが俺に覆い被さり、実験台の上に上半身を押し付けられるかたちで完全に身動きを封じられた。
必要以上に体重をかけられ、ただでさえ大ダメージをくらった俺の体はミシミシと悲鳴をあげる。
さっきから一度も抵抗してないんだから手加減しろよ!
と叫びたいが、口も押さえられて息すらろくに出来やしない。
やばい、冗談じゃない。このままじゃ死ぬぞ。
痛さや息苦しさで目の前がチカチカしてきた時、俺を押さえる男の1人が威勢良く叫んだ。
「容疑者、確保しました!!」
「現行犯だ。風紀室へ連行しろ」
「はい!」
乱暴に引っ張り上げられ、俺の視界がぐるりと回る。
大きな男が、凍てついた目で俺を見下ろしていた。
「言い逃れは出来まい。処分は後日言い渡す。覚悟しておくんだな」
無感情な声でそう言った男――風紀委員長は、俺に冷めた一瞥をくれてから身を翻して去っていった。
入学して約半年。
こんな短期間で大変なことになってしまったなぁと、どこか他人事に思って溜め息をついた。
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