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「早くレジ行け」と突っ立つ川島の背を叩く。
そこでふとあることを思い出して、魚肉ソーセージを片手に持ったままノロノロ動き出した川島に声をかける。
「そういや、お腹大丈夫か?」
「あ?別に腹壊してねーよ」
「いや違くて。昼に俺がパンチしたら痛そうだったから」
「はぁー?あんなショボい猫パンチでどうにかなるわけねぇだろ」
「猫……」
いちいち神経を逆なでする言い方だな。こめかみがピクピクするが我慢だ。大人になるんだ俺。
ふぅと息を吐いて、言い返したい気持ちを落ち着かせる。
「それは分かってるっつーの。それでも痛そうだったから、俺がぶつ前に怪我してたんじゃないのって言ってんの!」
なかばヤケクソになってそう言うと、川島は驚いたように目を見開いた。
その右手から魚肉ソーセージがぽろりと落ちて、カゴの中に着地した。
おお、ナイス着地。なんて呑気なことを思っていると、どこか呆けた顔の川島が一拍置いて口を開く。
「……俺、痛そうにしてた?」
「え、うーん。そうでもないけど、なんとなく?」
「……ふーん」
え、なにそれ。
聞いてきたくせに興味なさげな反応で背を向けられてムッとした。
レジへ足を向けた川島のシャツを後ろから掴んで足止めする。
その隙に腕を前に回し、ズボンにしまってあるシャツを引き出した。
「うわ、何!」
川島が振り返って、シャツの裾を上げて露わになった腹が見える。
引き締まって薄っすら筋肉がついた腹は羨ましいほど格好いい、が。
その真ん中に、痛々しい痣が一際目立っていた。
予想以上の酷さに、顔をしかめる。
見たところ最近できた痣のようだ。少し腫れて熱をもってる気がする。
触って確かめていると、「ヘンタイ」とふざけた声音でその手を叩き落とされた。
心配してやってるのになんて仕打ちだ!と文句を言いたくなったが、余計なお世話だと言われることは分かっているので黙って手を引っ込めた。
「ぶつけたばっかなら一応冷やしておきなよ。跡残ったら嫌だろ」
痣は冷やして良くなるのかは分からんが。腫れてるなら冷やした方がいいだろう。
言って聞くようなヤツじゃないとは思うが、一応そう助言して川島から離れる。
「じゃあまた明日」と手を上げて、さっさとレジへ向かった。
「……ムカつく」
川島の呟きは、俺には届かなかった。
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