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「つーか、ツル、チームについて聞いたん?」
「え」
しまった。
と思った時にはもう遅い。
ニンマリ笑うトラにがしりと肩を掴まれ、嫌な予感に顔が引き攣る。
顔を横に向けて目を泳がせるが、逃げられらない圧が。圧がすごい。
チームのことなんて聞かなきゃ良かった。
キラキラビームでも出してるんじゃないかという眩しい視線を真っ向から受け、少しでもそれから逃れようと顔を横に向け明後日の方向を見る。
「いや、聞いたというか、なんか風の噂で……」
「キョウさんにチームのこと聞いたっつーことは、勧誘されたわけだな?」
「いやいやそんな、別に勧誘とかではなくてですね」
「やっぱりなー。センスあるなと思ってたんだよ!俺が勧誘しようと思ってたけど、キョウさんから言ってきたんなら話は早い!」
「や、俺の話を聞いて」
勝手にどんどん話を進めるトラに焦るも、全く取り合ってくれる様子もない。
イイ笑顔で、ぐっと親指を立ててきた。
「次の抗争、楽しみだな!」
「無理だから!」
立てられた親指をへし折る勢いで押さえて伏せさせるが、その手をがっちり掴まれた。
やばい、捕まった。なんちゅー馬鹿力だ。
振りほどこうと腕を振ると、強制握手に変換された。なんて強引な。
テンション高く畳み掛けてくるトラに、もう白目剥くしかない。
なかば現実逃避して脱力した。
「今週末の抗争は松商来ねぇからさ〜、あ、松商って松栄(まつえい)商業高校のことな。松商以外はザコばっかでつまんねーんだけど、まぁツルの初陣っつーことで丁度いいかもしんねーな!」
「……」
「心配しなくても、俺がしっかりフォローしてやるから安心しな!最小限の怪我で済むようにしてやるから!」
「怪我する前提かい!」
俺のことか弱いとか言ってたくせに怪我させる満々じゃん!スパルタか!
やっぱりどこか一般人とズレてる認識に、逃げ場がないと悟って絶望する。
ここの連中だけでも、ちょっかいと言う名の物理的攻撃を躱すのにいっぱいいっぱいだと言うのに、抗争だなんてものに参加させられたら普通に死ぬと思う。俺の体はそこまで丈夫じゃない。
というか、過去に実際死にかけた。
まぁ死にかけたって言うのは大袈裟だけど。
実は抗争というものに参加したことは何度かあるのだ。
中学生のころ、俺はいわゆる不良グループに属していた。誤解しないでほしいが自主的ではない。俺自身は別に不良ではなかったし。
色々あってそういう環境にいたわけだが、生憎ひ弱だったもんで喧嘩は全くできなかった。ひたすら逃げ回っていた記憶しかない。
しかし大して活躍もしない割に疲れて高熱に倒れることはざらだった。
あの頃は自分の情けなさに何度悔し涙を流したか。苦い思い出だ。
今となってはすっかり開き直って平和宣言しているが。真面目万歳。
というわけで、喧嘩だとか抗争だとか、そういうものにはもう関わるつもりはないのだ。
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