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季節外れな蒸し暑さに耐えかね、下敷きでパタパタと顔を煽ぐ。
もうとっくに秋だというのに、しつこい残暑はなかなか去って行ってはくれないようだ。
「あー、地球温暖化……」
「どうしたツル〜。1現目体育だぞ、着替えないのか?」
「着替えないよ」
「なんと!ツルが悪い子になってしまった……俺の教育がいけなかったのか!?」
お前に教育された覚えはねーよ。
とはあえてつっこまず、朝からやる気満々で体育着で登校したトラを哀れんだ目で見つめる。
ちなみに今教室の中で体育着なのはトラだけだ。そして今日一日体育着になる授業はない。
教室に来れば気付くかと思い指摘しなかったが、どうやらこのおバカさんは本当におバカなようだ。
仕方ない。心苦しいが、真実を言わねばならない時が来た。
オロオロするトラの腕を掴み、真剣な表情をつくって俺は今朝からずっと心に閉まっていた言葉を告げた。
「今日の体育は座学だ。体育というか保健だな。この前大木先生が言ってただろ」
「なんだって……!?」
「そして念のため聞くが、お前制服は持ってきたのか?」
「ハッ!!わ、忘れた……」
衝撃の事実の連続に、トラは青い顔をしてよろめいた。
体育の日に体育着を忘れるなら分かるが、制服を忘れるとはどういうことだ。学生やる気あるのかこいつは。呆れを通り越して感心すらする。
今から取りに戻っても間に合わないだろう。
もういいやほっとこうと前に向き直り、パタパタ煽ぐのを再開する。
が、ガシィッと後ろから両肩を思いっきり引っ掴まれて倒れそうになった。
「なんで朝教えてくれなかったんだよ〜!ひどいじゃんかー!!」
「……トラ。俺は今までお前に甘過ぎたと思うんだ。これではお前のためにならないと思った。だからこれからはもっと己の力で精進していくべきだ」
「急に何の話!?」
「安心しろ。俺はいつでもお前を見守ってやるからな」
「だから何の話!?」
グッと親指を立て宣言し、騒ぐトラを無視して前に向き直る。
バシバシ背中を叩かれ椅子の背凭れをガッタガタ揺らされようが俺は動じない。今はスパルタモードなのだ。
そうこうしているうちに鐘が鳴り、大木先生がダンベルを上下に振りながら威勢よく教室に入ってきた。
いまだに残暑がキツいのこの人のせいなんじゃないの。
むわっとした暑さが増した気がして、下敷きを煽ぐ手に力を入れた。
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