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「久夜…、あのさ」
「……………」
「久夜、さっきからどうしたの?」
リレーの後から、久夜は全然喋らなくなった。
教室への移動の時も、教室にいるときも、そして今も。
……本当にどうしたんだろう。
今までの久夜からは考えることが出来ない行動に俺はどうすることも出来なくて、谷地島にも心配された。
「俺、もっと欲のない人間やと思ってたんやけどなぁ……」
グラウンドの横で、立ち止まった久夜の小さな声に、俺も立ち止まる。
「なにそれ、どうゆう……」
「俺な、昔からバスケ好きやった。
親が選手でな、それが凄い思うて始めたんや。
中学の頃に色々あって、八尋さんに会って、八尋さんも見ての通りの凄い人やろ?めっちゃ尊敬してるん。
それはまぁそれで、俺はバスケがあればいいと思ってた。
……本当はちょっとちゃうけど、それで良かった。
俺はお前を見守ってるだけでいいって、思ってたはずなんやけどな………」
泣きそうな声で、苦しそうな顔をした久夜に、だけど俺はどうすることも出来なくて。
久夜は俺を、知ってたの…?
前に…会ったことがある…?
でも俺は、久夜に会ったことなんてない。
だって、あんなイケメン見たら忘れるわけない。
けど、俺は知らない。
いつ…?なんで…?
聞きたいことが多過ぎて、言葉が何もでてこない。
「見守ってるだけでいいって、どうゆうこと…??」
「そのままの意味やで。ほんまそのまま…」
「よく、分かんない。だって俺は……」
「俺は、ずっと好きやった。梁瀬、お前が。」
はっきりとした声で、そう言った久夜は、真っ直ぐと俺の方を見ている。
逸らせない視線は、なんだか昼に告白された時と似ていた。
「だけど、お前は氷野が好きやから、俺はそれを見守ってるだけでいいって思ってた。
だって、会えただけでも俺、めっちゃ嬉しかったん。もう会うこともないって思うてたんやから。
……けど、やっぱ俺はお前が欲しい。
あいつにはやりたくない。」
「うわっ!?」
急に腕を引っ張られて体勢を崩した俺は、そのまま久夜に抱き締められた。
ギューっと効果音がつきそうなくらい抱きしめられて、俺の頭はパニックに陥る。
「好き、やから、俺と付き合って。
……お願い、梁瀬。」
震える声で耳元で囁かれる。
……俺はどうしたらいいんだろう。
好き、多分俺は久夜が好きなんだと思う。
だって、とっさに俺は久夜を応援していたから。
だけど俺は、久夜を抱きしめ返していいのかな。
同情なんかじゃない。
そう思う。でも、きっと彼方に言われても俺は同じように悩むんだと思う。
そう思ったら、抱きしめ返すことを躊躇ってしまう。
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