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番外編1~彼方と梁瀬~
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「ほんま1人で平気?俺もついてこか??」
「1人でへーき。心配してくれてありがと。でも大丈夫だから。」
「なら、ここで待っとるな。」
「うん。」
体育祭が終わったあとに待ち受けてるのは、高校初のテストだった。
テストは一週間の部活禁止期間のあとに、一週間かけて行われて、結果は学年別で全員分の順位と点数が一覧になって生徒玄関に張り出される。
その部活禁止期間の初日、俺は彼方と会う約束をした。
…久夜と付き合うことにしたことを報告するために。
久夜は教室で勉強をして待っててくれるらしく、何回もついていこうか、と聞かれたけど断った。
ありがたいけど、これは俺と、彼方の問題だから。
「お待たせ。」
「いや。」
「このクラスの人は?」
「みんな帰った。梁瀬のクラスもそうだろ?」
「…あぁ。」
彼方のクラスである8組の教室は彼方以外誰もいなく、静まり返っていた。
机で本を読んでた彼方は、本を閉じて立ち上がる。
俺は逃げたい気持ちを抑えて、彼方の前に立った。
「で?俺に言いたいことって?」
大体検討はついてるだろう彼方にそう聞かれて、俺は息をのむ。
大丈夫、…大丈夫。
小さく吸った息を吐く。
「俺、久夜と付き合うことにしたんだ。
それを彼方に言いたくて。
…俺にとって、彼方は大事な友達だから。知っててほしいんだ。」
知っててほしい、なんて単なる俺の自己満だって分かってる。
押し付けがましいことも。
だけど、いつだって大切だった。
俺にとっての一番は彼方だった。
彼方に手を差し伸べたあの日から。ずっと。
だから彼方には、応援してもらえなくても、せめて俺が好きな人を分かってほしい。
どれだけ、彼方を傷つけてしまうことになっても。
「…そう。梁瀬は彼を選んだんだ。
俺のことは友達…ねぇ。」
「っ…」
「俺はね、ずっとお前が好きだったよ。
仲間に入れてくれたのも、陸上に誘ってくれたのも、いつだってお前だったから。
無理やり抱いたのは…俺が悪かったと思ってる。それでも、間違ってたとは思ってない。
だってあの頃、お前も俺のこと好きだっただろ?」
「……好きだったよ。好きだった。だから裏切られたって思った。悲しくて辛くて、ぐちゃぐちゃだった。」
「………」
「でも、今は違う。俺は久夜が好きなんだ。
もう昔の俺じゃない。」
「………、そう。」
1人で頷きながら、何も言い出さない彼方。
何を考えてるのかその無表情さからはわからない。
「梁瀬、俺はね。今でもお前が好きだよ。多分それはずっと変わらないと思う。」
「だったら、」
「1年前の俺はね、お前を繋ぎ止めることに懸命だった。側にいてほしかった。置いてかれるのが嫌だったんだ。」
静かに息を吐いた彼方の頬には、うっすらと涙が伝っていた。
なんで、なんて言えなかった。
その表情があまりにも綺麗で、儚くて、脆くて。
触れたら簡単に壊れてしまいそうだったから。
「俺はずっと…、お前の側にいたかった。梁瀬も俺のこと好きだと思ったから抱いた。
だけど、まさか何も言わずにいなくなるなんて思わなかった。
俺は追いかけてきたんだ。お前がここにいくって聞いて、慌てて俺もここを受けた。みっともないくらい必死だったよ。」
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