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『ねぇ、君、氷野くん…だよね?
いつも教室で本読んでるけどさ、みんなと遊ばないの?
ってゆーか、一緒に遊ぼうよ!!!!』
『…人、嫌いなんだ。俺は1人でいる方が好き。
誘ってくれてありがとう、でもごめん。』
『そっか、じゃあ気が向いたら一緒に遊ぼう!
みんなで遊ぶのもきっと楽しいよ!!』
キラキラと輝く瞳で笑った廣川梁瀬は、バタバタと走って教室を出て行った。
忘れ物を取りにきたついででも、声をかけてくれたことは純粋に嬉しかったのか、10歳にして人が嫌いと言い放った氷野彼方は、少しだけ顔を綻ばせた。
いつも人の中心にいる梁瀬を彼方は時々見つめていた。
あんな風に笑っていられたら、きっとこの世界をもう少しだけ楽しめたかもしれない。と思いながら。
『氷野くんは~、あっ、彼方って呼んでいい?俺のことも梁瀬でいいから!』
『…うん。』
『彼方は、なんで人が嫌いなの?何か嫌なことされた、とか?』
『親が、仲悪くて。だから。』
『そっか~俺らは親を決められないもんな。でもさ、それで人全員と関わらないのはもったいないと思うな。』
度々話しかけてくる梁瀬はその都度違う話題を振ってくる。
昨日のテレビが~、とか最近ハマってるものは~、とか、梁瀬の話題は尽きないのか、ニコニコしながら話している。
休み時間の数分が1年間合わせても数回しかなかったけれど、彼方にとってはかけがえのない時間だった。
5年生になって違うクラスになると、話すこともなくなり、彼方はまた平凡な生活に戻った。
1年間を変わらずに過ごして、少しだけ期待をした6年生の4月。
クラス表を見て彼方は心の中で歓喜した。
『彼方!!今年は同じクラスだな!!よろしく!!』
『う、うん。』
教室に行けば、1年前より大きくなった梁瀬が相変わらず明るく彼方に話しかける。
そしてある日の休み時間。
『梁瀬~、外行こうぜ!!』
『あぁ、行く!!
彼方!一緒に行こうよ!!』
『えっ?』
いつものように、中心的グループが外に行く。
梁瀬がそこにいることは彼方も知っていて、だからこそ梁瀬が彼方の手を掴んだことに彼方は驚いた。
立って!と言う梁瀬の声に反射的に立ち上がった彼方。
梁瀬はそのまま彼方の手を引いて外へ出る。
『えっ、えっ!?』
何が何だか分からないまま走り出した梁瀬に、繋がれた手のせいで彼方も一緒に走る。
『今日は鬼ごっこだから!!彼方走るの好きって前に言ってたろ?だから鬼ごっこならいいかなーって!
とりあえず、鬼はあいつだから。逃げるぞ!!』
『ちょっ!?えーっ!?』
『ほらきた!!走るぞ、彼方!!』
『や、やなせくん!?!?』
引っ張られた手に驚きながらも、彼方は嬉しそうにほほ笑んだ。
その日の思い出は、深く彼方の心に刻まれた。
彼方にとって、初めて学校が楽しいと思えた瞬間だった。
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