アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
30
-
バスケ部のアンカーはもちろん、八尋先輩。
サッカー部のアンカーは皆に名前を呼ばれてたから多分、湯浅光輝先輩。……部長の人だよね。
お互いどっちも譲らない。
八尋先輩は断トツで早いものだとばかり思ってたけど、違うんだなって思った。
予選の緩さが嘘にたみたいに、どっちの表情も真剣で、肩を並べて一歩でも前に、って気持ちが伝わってくる。
湯浅先輩の方だって、勝手に名前が光ってるなーとか超失礼なこと思ってたと反省するくらいには早い。
これ、ずっと見てたい………。
ふわふわして、きらきらした時間に夢みたいに引っ張られていく。
「八尋っ!!!!!」
だけど、隣にいた千先輩の声が俺を現実に引き戻した。
----- パンっ、パンっ !!!!
ピストルの音が2回鳴り、ゴールしたことを知らせる。
先にゴールテープを切ったのは、八尋先輩だった。
ゴールして倒れた二人の先輩に、走った先輩たちが寄っていく。
バスケ部には笑顔が、サッカー部には悔しそうな表情が浮かんでいた。
それは応援席の方も一緒で。
俺も嬉しすぎて千先輩と抱きあった。
全部の部活がゴールし終わると、自分の席に戻れと言うアナウンスが流れた。
さっきまでの熱が一気に冷めていって。
だけど笑い声や称賛の声が色んなところから聞こえてきて、ちょっと嬉しかった。
…残念ながら部活で応援出来るのはここまで。
「じゃあね、梁瀬くん。また後で、棒倒しの時に迎えに来るね。」
「はい。ありがとうございます。待ってます。」
「あと、リレーも頑張れ!!」
「はいっ!!」
笑顔の千先輩と別れて一人で席に戻る。
トラックの中ではとりあえず一通りはしゃぎ終わったのか、退場していた。
次は騎馬戦。そのあとにクラスリレーの本番。
久夜は多分すぐに着替えて騎馬戦に出るだろうから、席には戻ってこないだろう。
俺は席の周りをキョロキョロ見回して、谷地島を見つけてその隣に座った。
「早かったねー、羽桜。あんな速いとか、体力テストの時とか手抜いてたね。」
「な。俺も初めてあんな早いの見た。あいつ、午前の色別リレーの予選すら本気じゃなかったんだって、ちょっと驚いた。」
「そうだね。」
「そう言えばさ、谷地島、騎馬戦でないの??」
「うん。でない。久我が出るのに俺はでないよ。」
「??なにそれ、何の決まり??」
久我くんが出るのにはでない。
だから色別にも出なかったのかな……?
いやいや、なんで??そんなことする必要ないじゃん。
「なんとなく。俺が久我と比べられたくないだけ。あいつ、運動神経に関しては最強だから。羽桜と同じくらいには。」
「……谷地島もそんなこと思うんだ。」
「廣川は俺をなんだと思ってるの。」
……さっきの久夜と同じだ。
苦しそうに笑ってる。
傷ついてるのに笑ってる。
谷地島はなんで比べられたくないんだろう…
それはきっと俺が聞いちゃいけないことで、多分谷地島も誰にも触れられたくないこと。
誰にだって悩みとか不安があって。
どうしようもなく苦しくなって。
でもそれは自分一人でしか抱えられない。
誰に分けることも、一緒に背負うこともできない。
だけど、それでも、それを越えなきゃいけない時がきっとくる。
いつか、遠くない未来に絶対くるんだ。
「気持ちは分かるかも。俺だって負けたくなかったし。」
本当は誰だってそうだ。負けて嬉しいやつなんかいるわけないし、誰だって誰かに勝ちたい。
「うん。そうだね。……だから、勝ちに行く。リレーがね、久我と勝負する唯一の競技なんだ。」
「…ははっ、自信ないなー」
出来るなら彼方と走りたい。でもそれは無理だから。
せめて、谷地島のためにも、俺のためにも、勝ちたい。
勝って、皆で笑えればいい。
だって谷地島は、少しだけ……、ほんの少しだけ久夜に似てる気がしたんだ。
「あー、騎馬戦終わっちゃった。早いなー」
「えっ、勝った!?」
「んー、負けたんじゃない??この8クラス対抗騎馬戦、結果分かりづらいからね。
後で最終結果聞く方が早いかも。」
「……確かに。俺らも行くか。次、だろ。」
「うん。そうだね。」
都賀とかも誘って、集合場所に向かう。
久夜以外が揃って、あとは待つだけ。
あぁ………緊張してきた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
31 / 80