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騎馬戦に出てた人たちが退場してリレーに出る人たちだけがそのままトラック内に残ってる。
そこにいる久夜と合流して少しの作戦会議。
「まぁ、思いっきり走るだけやろ。」
「そうだね。本気で行こう。」
「目標は1位だから。」
久夜と織部、谷地島が真剣な顔でそんなことを言う。
本気で走る。それで勝つ。
一番の敵は青。だけど、他の色もまだ分からない。
円陣を組んで気合いを入れた。
入れたんだけど……
「嘘だろ、何で順番変えてんだよ…」
織部のその声に、皆が織部が見ている方を見る。
そこには、バトンを持った久我くんと、アンカー用の青色のゼッケンを着た彼方がいた。
一走とアンカーの入れ替え……
どっちも早いから変わらないんだろうけど……
「廣川」
「あぁ」
さっき話した手前、谷地島と言いたいことは一緒だと思う。
まさかの直接対決とか。
俺も、谷地島だって想像してなかった。
……いや、これも願ってたことじゃないのか…??
そうだよ、俺はもう一回走りたかった。
彼方と同じところで、彼方と一緒に。
あれだけ、羨ましいと思ってた。
……それが叶うんだ。
「谷地島!俺、頑張るから、お前も頑張れよ!!」
「…あぁ!!」
谷地島はそのままバトンを取りに行く。
俺も、配られているゼッケンをもらい、それを着る。
「梁瀬。」
「どうした?お前あっち側だろ。」
「まぁ、そうなんやけどな。氷野と走るん大丈夫かなって。」
「大丈夫もなにもないだろ。走るよ。だってずっと走りたかったから。」
あの日の彼方の後ろ姿が今でも忘れられない。
眩しいほどに輝く太陽。
青い空に浮かぶ真っ白な入道雲。
苦しいなかで見えた、神々しいほどに輝いたあの白い翼が。
彼方の背中で大きく羽ばたいた瞬間を。
それが綺麗で、近づきたくて、でもとても遠くて、俺は追い付くことを勝手に諦めた。
もう、諦めたくない。手放したくないんだ。
「せやったな。頑張れ。」
ぽんっといつものように俺の頭を一撫でして反対側に行く久夜。
……心配してくれたのかな。
久夜の笑顔がどこまでも俺を引っ張りあげてくれる気がする。
負けたくない。勝ちたい。
誰しもがそれを願う。
だけど、世界はみんなには優しくなくて、勝者がいれば敗者もいる。
勝った方が偉いとか、負けた方が悪い、とかじゃなくて。
ただ純粋に差が分かるだけだ。
確実に、明確な差が。
俺はそれが怖くて逃げた。
けど、もう一度だけチャンスを貰ったんだ。
やり直すことじゃない、挑戦するための。
『学年別リレー、本選。一走者目の人は用意してください。』
その声に、谷地島と久我くん、他の4色の人もレーンに並ぶ。
予選のタイム順に並んだ本選の最初のコースは、3コース目に青、その外側の隣が赤。
否が応でも、谷地島と久我くんの早さの違いが分かる。
負けてほしくない。勝ってほしい。
負けるところは見たくない。だけど、俺たちが勝ちたい。
矛盾した心が、叫んでいる。
勝ちたい…
負けたくない……
『学年別リレー、第一学年、本選。
位置について、よーい………』
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