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急展開な雪下さん
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飲み会の日、平島に告白された。雪下さんを気にしつつも平島の押しに負けて、一緒に買い物に行った途中にある公園で突然に。もちろん断ったけど、なかなか諦めてくれなかった。最終的には諦めるからキスしてくれと言われて、それも断ったけどかなりしつこく食い下がられた。雪下さんを置いて買い物に行くなんてすごく無神経で申し訳ないことだから、俺は一刻も早く帰りたかったんだけど、平島はなかなか解放してくれなかった。それで、キスをしたところを雪下さんに目撃された。
雪下さんにどうしても謝って説明しなくちゃと思って、俺は玄関前で待っていた。電話も全部返って来ないから、これしかなかった。どうしようもないことをしてしまったっていう自覚はある。反省もしている。本当にバカだ。自分で蒔いた種なんだから、自業自得だ。許してもらいたいなんて、甘すぎる。そもそも、なんであの時平島の押しに負けて買い物に行ったんだろうか。その時点で自分の無神経さに絶望する。
ようやく帰って来た雪下さんは、俺に気付くとものすごい勢いで階段を駆け下りて行ってしまった。慌てて全力で追いかけると、思った以上にあっさりと雪下さんに追いついた。
「嫌だって言ってんだろ!」
説明しようとする俺の言葉を遮って、雪下さんは叫んだ。今まで見たことがない剣幕の雪下さんに、俺はたじろいだ。
「雪下さ」
「離せ」
きつく睨まれて、俺は何も言えなくなりゆっくりと手を離した。雪下さんは、俺が掴んでいた手首を痛そうにさすった。もしかしたら、赤くなってしまったかもしれない。
「ホモとか言って、本当は女もいけんじゃねーの?」
冷たい表情の雪下さんが、そう言いながら呆れたように笑ったとき、一瞬にして心臓が凍り付いた。そして、ギシギシと握り潰されるように痛んだ。俺は、一気に涙が込み上げてくるのを必死で抑えた。自分が悪いのに。泣いちゃダメだ。もっと酷いことを言われたって、殴られたって仕方ないことを俺はしてしまったんだから。
「そんな、違います」
「それとも、俺に好きだって言ったけど、やっぱ違ったとか?」
「違います」
「理想の俺とは違ったから嫌気が差した?」
「違います」
「それなら、何、飽きた?」
「全部違います!」
「じゃあ、なんなんだよ!」
「だから、諦めるからって言われて」
「好きなら、なんで俺以外の奴とキスすんだよ!!!」
びっくりして何も言い返せずに雪下さんを見ていると、顔を上げた雪下さんと目が合った。でも、雪下さんはバツの悪そうな顔をして、また俯いてしまった。
「俺、雪下さんが好きです」
泣きそうになりながら抱きしめると、雪下さんは、今度は逃げようとしなかった。
「俺は怒ってるんだよ」
「ごめんなさい」
「俺は、今はもうセフレいないし、黒田君以外とキスとかしてないよ」
「……すみません」
「……わかった、今回は許す。けど、次やったら覚悟しとけよ」
「はい……、え?次?」
聞き間違いかと思って、抱きしめた腕を離して雪下さんの顔を見た。次?次って、次?え?だって、
「あの、あと2日しか無いんですけど……」
「だから……!……あー、……今度は無期限だけど……どうしますか」
「え、え?無期限って、それって」
「……そういうことだよ」
無期限って、つまり、正式に付き合ってくれるってこと?なんで、どうして。俺、あんな酷いことしたのに。
あまりの急展開に頭がついていけない。なんで。
「いいんですか?どうして?」
「そういうことだからだよ」
「そういうことって何ですか」
「それは、だから、あー、……わかるでしょ」
全然わからない。
「言葉で言ってくれないとわからないです」
「わかってよ」
「無理です」
「わかれ」
「わかりません」
雪下さんがため息をついて俺の肩に額を当ててきた。
「黒田君さぁ」
「はい」
「なんでキスとかしてこないの?」
「え!?」
「俺から行くばかりで、黒田君からは何もしてこないし」
「それは……ウザいって思われたり、嫌われたくなくて……」
「それで、平島さんだっけ?とキスしてるところ見ちゃったし。嫌われたり飽きられたのかと思った」
「すみません」
「好きだから、結構気にしてたし、傷ついてたよ、俺は」
「すみま……え?」
ええええ!
思わず大声を上げてしまった。え、何て言ったの?好きって?聞き間違い?
「え、え?雪下さん、もう1回言って下さい」
「何を」
「え、す、好きって、本当ですか?」
雪下さんは真顔のままそっぽを向いてしまった。好きって、聞き間違い?幻聴?ただの俺の妄想?
「なんでですか?」
「黒田君、落ち着いて」
「無理です」
「あ、紅茶淹れようか?」
「誤魔化さないでください」
「じゃあ、紅茶飲んだらもう1回言うから。これでいい?」
なんだか上手く流されたような気がするけど、俺は雪下さんに手を引かれながらアパートへと歩いた。
これは俺の妄想なんだろうか。だって、雪下さんに謝ろうと思って、雪下さんに怒鳴られて……あれ?なんで?どうしてこういう展開になったんだっけ。雪下さんが俺のこと好き、って、嘘でしょ。あ、これはやっぱり夢だ。
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