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後日談①
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黒田と名乗る長身でつり目のピアス男が隣に越してきてから1年半。そして、その黒田と恋人になってから半年。夏が過ぎ、10月に入って間もない今日この頃。黒田との関係は、正式な恋人になったというだけで何も変化(進歩)していない。一緒にだらだら過ごしたり、出かけたりして、時々キスをするだけだ。今日の昼間も一緒に買い物に出かけて、夜になった今は黒田の部屋で夕飯作りを手伝っている。
「そういえばさ、黒田君、背伸びてない?」
今更だが、ふと思った違和感を口にしてみた。出会った頃よりも、なんとなく背が伸びているような気がするのだ。
隣で食材を切っている黒田は、ひたすらフライパンの中身を炒めている俺を不思議そうに見てきた。
「そうですか?4月に測ったときは180cmぴったりでしたけど……」
「こっちに越してきたときは?」
「178.5cmくらい……あ、伸びましたね」
黒田はへらっと笑って、切った野菜をフライパンに投入した。
は?高身長の分類に属しているのに、1年間で更に1.5cm成長した?いまだに成長期らしい。信じられない。この巨大樹め。どんだけ成長すれば気が済むんだろうか。このままだと本当にライオンになりかねない。いや、そもそも黒いライオンっているのか?黒い超大型犬の方が合っているかもしれない。犬とは似つかわないつり目だけど。笑った顔は犬っぽいし。
「雪下さんはいくつでしたっけ?」
「あー、173くらい……、何笑ってんの」
明らかにニヤニヤし始めた黒田を睨むと、黒田は誤魔化すように咳払いを1つして、使っていた包丁とまな板等を洗った。
なんだか、いつもと変わらない調子のやり取りだ。不満があるわけじゃない。が、付き合って半年が過ぎたにも関わらず、するのはキス止まり。……いや、男同士だし、女と付き合うのと訳が違うのは分かっている。けど、男同士ってこういうものなのだろうかと。付き合う前はそういう事をするのを想定していたのに、こうも何もないと逆に不安というか、これでいいのか分からなくなってくる。何しろ、俺は女との経験は豊富にあれど、男との経験は0。いわばホモ初心者なのだ。
初心者なりに勉強しようと思い至ったこの前、とりあえずインターネットで色々と調べてみたら、出てきたのはホモがあれそれするエロ動画サイトだった。どんなもんかと覗いてみたら、どれもガッツリまぐわう衝撃的なもので、あまりのショッキングな映像に一気に腰が引けてしまった。他にも色々とワードを変えて検索してみたのだが、出てくるのはどれもこれも尻を使うセックスに関してばかりだった。女役、男役があるのも知っていたし、アナルセックスも知っていた。それでももっとライトなものだと思っていた。俺の認識が甘かったのかもしれない。想像を上回るハードさについて行けない。超怖い。だって、あれ、ヤバいだろ。
だが、女とは長くて1か月、短くて知り合ったその日にはセックスをしていた。そう考えると、半年間キスしかしていないなんて信じられない。新記録だ。
結局何が言いたいのかというと、恐怖しか無いにしても、付き合って半年経ったんだからそういうことをしてもいいんじゃないの(というか、するのが普通なんじゃないの)って事だ。最終的に尻に行き着くんだとしても、その時は俺が男役になって黒田が女役になればいいだけの話だし、それに最初のうちは抜き合う程度の軽い内容だったらまだ……
「雪下さん、大丈夫ですか?」
「え?あぁ、うん。ちょっと考え事してた」
食事中に考える内容じゃなかった。
黒田はいつも通りの間抜け面だ。俺が色々と勉強して一人悩んでいるとは、全く知らないだろう。というか、こいつも考えていたりするのだろうか。今月で21になる訳だし、黒田も同じ男だし、そりゃ考えるよな。いや、黒田の事だから何も考えていないかもしれない。じゃあ、俺が頑張るしかないのか?いやいや、ちょっと冷静になろう。これだと、まるで俺が欲求不満みたいだ。もういい。キスだけで十分だ。もうそれでいい。何も気にしないでおこう。そうしよう。
「黒田君、今月誕生日でしょ」
「はい」
「なるべく早く仕事終わらせるから、夜空けておいて」
「は、はい!」
とにかく今、優先的に考えるべきなのは黒田の誕生日だ。あと約2週間後に迫っている。今年は何したらいいんだ。プレゼントは決まっているのでいいとして、場所をどうしようか。
食事を終え、黒田が洗った食器を受け取って布巾で拭きながら、もやもや浮かんでいた思考を振り払うように、俺は黒田をどこの店につれて行くかを考えた。
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