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62迷惑と心配
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低く唸るような低音が、男達の後ろから発せられた。
砂地を引きずってゆっくり歩く音が、妙に恐怖感を煽る。
逆光ということもあるが、黒いオーラはそれだけのものでは無かった。
く、にゆき……っ
路地の入口を背にして立っていたのは邦之だった。
地面を踏みしめて立つ姿はとても大きく、それだけで覇気があった。
「なんだてめ」
俺を掴んでいた男が、顔だけ邦之に向けてガン付けた。
ガッ────
鈍く、骨を打つような音が、乾いた空気を振動させた。
腕が俺から瞬時に離れたと思うと、男は地面に倒れていた。
「え……っ……」
突然放されたことにより、力が入っていなかった身体はペタリと地面に落ちる。
すぐ側の地面には、男が白目向いて倒れている。
き、気絶してる……?
「おい、お前ら」
邦之の声は、まだ残っている男2人に投げかけられた。
「こいつ連れてさっさと行け」
ドスが効いた低音に2人は怯えたようで、俺の傍にいる頭の男を引きずって路地から出ていった。
「…くに……」
「馬鹿っ!!!!あれ程離れるなと言ったのに、いきなりいなくなりやがって!!しかも危ない目にも合ってたんだぞ!!もう少し注意をしろ!!危機感を持て!!!!」
突然の邦之の大声に、震えていた身体は硬直へと変わった。
そうだ……俺……、邦之に、迷惑……かけちゃった───
迷惑……
どうしよう……
また……
あの人達みたいに……
殴っ…………
「馬鹿……心配したんだ……っ」
柔らかな邦之の香りが、俺を包んだ。
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