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64手
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まだおつかいが終わっていない俺達は八百屋に向かうべく
路地から出た。
「うわー本当に人多いな」
本通りの位置への道は、来た時よりも人が増えている気がする。
ま、またはぐれたら本当に邦之にしばかれる……。
「ほら、さっさと行くぞ」
「うん。……え?」
邦之は俺の顔の前に手を出した。
まるで、現代の女性エスコート的な……
「楓がすぐに迷子になるから、迷子防止」
邦之は早く手を寄越せと急かすかのように指をちょいちょいっ、と動かした。
「え、あの、今度は気をつけるから…」
こ、この年で迷子防止とか、そのために手を繋ぐとか恥ずかしい……
「……まだ珠蘭屋に帰っても仕事あるんだから」
「わっ!!」
ちょ、ちょっと……!?
邦之は強引に俺の左手を掴み取る。
指と指の間に、邦之のがスルリと絡まる。
な、なんで恋人繋ぎ!!!?
「邦之っ、こ、ここまでは」
「ごちゃごちゃ煩い。ほら、行くよ」
ぐいぐいと俺の手を引き、市へと向かい歩く。
背の高い邦之の後ろは、みんなが避けた後で、とても歩きやすい。
邦之は足が長いから頑張ってついていかなきゃ…………あれ……
「…邦之、ありがとう」
「何が」
「歩幅、合わせてくれて」
「何が」
「ふふっ」
邦之は速くなりすぎないように、俺に歩幅を合わせて歩いていた。
素っ気ない癖に、こういう所は気を使うんだもんな…。
「楓、あそこが行きつけの八百屋。場所覚えといて」
邦之が指さした方には、大きな露天があり、様々な野菜が人の間から見えた。
「おじさん、おはよ。これ頂戴」
邦之は、若虎が書いたメモを八百屋のおじさんに渡した。
おじさんはとても良い人そうで、気さくに邦之と話している。
「あいよ。お?邦ちゃん、その子は」
「これはこの間からうちで飼ってる楓」
「邦之!?飼ってるって何!!」
邦之はポンポン、と俺の頭を叩く。
飼うって、俺は猫かなんかかよ!?
「楓ちゃんてのか。ちっちぇえな!!ワハハ」
「うっ、お、男です……っ!!」
豪快に笑う八百屋のおじさんはバシバシと俺の肩を叩いた。
「からかっただけさ!!すまんな!!ワハハ」
いた、痛いって……。
巨漢なおじさんに叩かれるととても痛い……。
「これからコイツもここに来る事になると思うから、その時はよろしく」
邦之は俺の肩を抱いて、おじさんにしっかりと顔を見せた。
「よろしくお願いします」
ここにはお世話になるんだから、しっかり挨拶しないと。
女にわざと間違えたことは今回は許そう……。
「おう。楓ちゃんな。覚えた!!ワハハ!!」
う……『ちゃん』は直らないのか。まぁいい……。
あれ、そういえば、俺だけじゃなくて……
「ほい、邦ちゃん。」
おじさんはとても美味しそうな野菜を邦之に渡した。
「ありがとう」
「おう。丁度だな」
邦之はガマ口の財布から小銭を出しておじさんの大きな手のひらにのせた。
「じゃ、いこっか、『邦ちゃん』」
「っ!!……黙っとけ……」
邦之は一瞬呆気に取られたように固まり、直ぐに顔を逸らした。
「邦ちゃんごめんって〜」
「置いてくぞ」
怒ったかな……?
あ────
後ろから、邦之の耳を見ると、これまでにないぐらい、赤く染まっていた。
可愛い────っ
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