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68葉月と楓
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あれから、伸之助さんの部屋には肴と酒を持っていったきりで、最後に話したのは伸之助さんが帰るところだった。
「あ、楓。今忙しいかい?」
「いえ。大丈夫です」
玄関で草履を履いていた伸之助さんに呼び止められて、俺は伸之助さんの視界に立った。
「明日も来るんだが、その時はまた話し相手になってもらえないかい?」
「え……」
「楓、今済はんからのご要望だよ。応えてやりんしゃい」
座敷の廊下からススス、と現れたのは葉月さんだった。
「いいんですか?」
「いいもなにも、今済はんがそうして欲しいと言っているんだ。断る理由がありんすか」
くくく、と笑う綺麗な顔が優しくて、俺はホッとした。
「じゃあまた明日」
「またおいでなんし」
伸之助さんは戸をくぐって見世の外に出ていった。
「葉月さん、改めまして、吉乃楓です。裏方として働いています。よろしくお願いします」
葉月さんには、伸之助さんから紹介して貰っただけだったから、やっぱり自分からしっかり言っておかないと失礼かと思った。
「楓、あんたはわっちのお客を取ってしまいそうで怖いわぇ」
「えっ?」
ふふふ、と意味ありげに笑うと、俺の頭を撫でた。
お、女の人に頭を撫でられるのはちょっと……
なんだか、男子としての尊厳を一気に剥がされた気分。
ていうか、
「お客を取るって……?」
「今済はんはあんたに興味が移っちまった。わっちが飽きられるのも時間の問題さな」
葉月さんは何故か、自分に言い聞かせるように呟くと、悲しそうに笑った。
お客を……取る……。
「明日も今済はんの相手をしてやりなんし」
ぽんぽん、と頭を軽く叩くと、またすすすっと、音を立てずに座敷の方へ消えていった。
げ、現代における女子胸きゅんポイント、頭ぽんぽんを女性にやられたぁあー!!
くぅ……悔しいけど、葉月さんかっこいい……。
それからまた、見世は慌ただしくなり、俺は座敷と水場を行ったり来たりで大忙し。
慣れてきたとは言えど、やはりここまでの忙しさはハードだった。
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