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11珠蘭屋
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「あ、あの……やっぱり俺は……」
もう一度断ろうとすると、卯月さんに背中をぐいぐいと押された。
「えっ、あの、いや……」
「今日はもう遅いんだ。ここの見世はそんなに不快な見世では無いつもりだよ。ほら、上がって」
えっ……え────っ!!!!!?
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見世に入ると、縁側の手摺には綺麗なランプが定期的な間で置いてある。
オレンジ色の光は装飾を煌めかせている。
すごい……
廊下沿いは障子で閉まった部屋がある。
「この部屋は『お座敷』。大尽……ぁ……お客様をお迎えするところ」
俺の先頭を案内してくれる卯月さんは、キョロキョロしてもの不思議そうに辺りを見る俺の気持ちを察してか、説明をしてくれた。
こ……ここで色々なことが……?
ゴクリと唾を飲んだ。
いや想像できるほど経験したことないのでね…。
「そうそう……。これは西洋からの物でね、『らんぷ』と言うらしい」
さっきから目に付く、俺にとっては御馴染みのものでも、この時代の人は少し珍しいのかも。
「あぁ、楓。」
「はい?」
すっ…と卯月さんは振り向いて、俺を見た。
その振り向くだけの仕草が、静かで上品で見惚れてしまいそうだ。
「お前さん、着物は持ってないね?」
「え、着物……?」
そんなの持っているはずない。なんせ、あるのはこの制服だけだ。
「部屋に案内する前に着物を貸してあげる。」
そう言うと、また前を向き、静かにスッスッと歩き出す。
少しして、卯月は一つの少し小さめな部屋に入った。
「楓、突っ立ってないで入っといで」
中から呼ばれた、そっと足を踏み入れる。
畳だ……。……当たり前か────。
6畳ぐらいの小さな部屋には桐箪笥が二つ程並べられていて、細長い姿見とで部屋はいっぱいだった。
「たしか……ここらへんに……」
卯月さんは着物の裾を片手で抑え、静かに座る。
一番下の箪笥を見て、数枚捲ってまた閉まった。
もう一つ上の段を探り出す。
「楓、ちょっと」
入口の傍に立っていた俺を、目線は手元に向けながら呼びかけた。
「これはどうだい?お前と同じく楓模様のがあった」
ぐいぐいと引っ張り出したそれは、明るい紺の生地に、白と金色で楓の模様が入っている、少し大人びた着物だった。
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