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33初めての見世
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「ていうか、男同士に関係ないと思うけど」
呆れたようにため息を横に吐きながら、邦之は若虎をを見やる。
「このやろ〜!!ほら!!楓もなんか言えよ!!嫌だったろ!?」
「はいっ!?ふぇ、あ……?」
グルんっと顔をこちらに向け、『嫌だったよな』と、念押しするかのようにこちらを見つめてくる。
突然話に引きずり込まれたことにより、困惑して言葉が出てこないけど……
今聞かれてるのは、邦之と、か、間接キスしたことについてだよな……?
「嫌っていうか……あの……」
だって、邦之の言う通り、男同士だからクソもないのだが、若虎はあくまでも答えさせる気らしい。
「……っ、わ、わかんねぇよ……っ」
俺は手の甲で口元を隠し、合わせたくない目線を床へ投げ出した。
確かに、『意識』をすると、なんとも言えない感情は出てくるが、それは全て頬の熱に注ぎ込まれていて……。
「……、」
「っ……」
そこで、2人は黙ってしまった。
「……?若虎?邦之?」
チラリと、目だけを2人に向けると、うっすらと頬が朱に染まっていた。
『熱でもあるの?』と、問いかけようとした時、
「おい楓、客が入ってる」
「あっ、伊助さん。すみません今行きます!!」
俺は慌てて水場を出ようと、伊助さんが立っている入口に足を急がせた。
「と、まった」
「へっ?」
伊助さんの横を通り過ぎる寸前、左腕を掴まれた。
「楓、顔赤いぞ。熱があんのか」
「っ!?」
コツんと額が合わせられ、伊助さんの顔が近い。
「んー、熱はないな」
「だ、ダイジョブデス……」
すすすーっと伊助さんから距離をとる。
「ん、それならいいよ」
そう言うと、伊助さんはこちらをジトッと見ている2人に向き直った。
「なんだお前ら。喧嘩してるってことは料理も酒も完璧なんだろぉな?」
あ、あれ……?なんか怖い……
普段とは一変して、優しさオーラがない。
寧ろ逆らえないぐらいの気迫を纏っている。
「っ、下拵えは完璧ッス」
若虎がそれに少したじろぎながらも、言葉を返した。
「ならいい。だが、仕事中の喧嘩は頂けないが……?」
「すみませんっ」
「すいません……」
若虎はすぐに謝り、邦之も『仕方なく』といったかんじだ。
「楓も止めて悪かったな。大尽を頼んだよ」
「はいっ」
俺は小走りで水場を出た。
熱を持った額が、風に触れて気持ちよかった。
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