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36若虎
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あれから数分、なんとか震えは最小限に抑える事が出来た。
だけどやっぱりまだ、気分は優れない。
仕事中だし、行けるところは一つしかない。
誰かいるよね────?
俺は、ちょっとふらつく足取りで水場へと向かった。
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水の音がする。人の気配もある。
中を覗くと、若虎が1人、洗い物をしていた。
その光景に、とても心が落ち着いて、視界が少し揺らぐ。
「……若虎……」
「あれ?楓」
小さくポツリと呟いただけなのに、その声にピクッと反応した若虎が、水を止めてこちらを見た。
「どうした?まだ卯月さんの……。楓っ、」
若虎は、普通に話していたのに、途中から表情を焦りへと変えて、俺に近づいてきた。
「どうした」
「、ごめん……あの……」
若虎……鋭いヤツなんだなぁ────
それとも、俺はそれだけ酷い顔をしていただろうか。
もっと、安心感がほしい。
心からの安定と────。
今は、言葉をかけられるより、より……
「……ごめん、ちょっと、こうさせて……」
俺は目の前に立つ若虎の胸にすがりついた。
安心したい。何かで。誰かで。温かいもので。
ギュッと若虎の着物を握り、顔を胸板に埋める。
「楓……」
一瞬驚いたようだが、若虎はそのまま、俺の髪を撫でた。
フワフワと、同じリズムで、何度も。
怖かった────あの人────
今思えば、なんであの人が怖いのかわからない。
だけど、最初に出会った時に嫌な思いをしたからだろう、と何となくの予想はつく。
元々、現代とかでもそうだった。50代ぐらいに見える男性には、『なんとなく』恐怖感があった。
理由はわからない。
だけど唯一あるとすれば、盥回しにされてきた親戚の人達は高齢だった事……かな……。
無意識に染み付いた……恐怖感────。
「楓」
「あっ……」
不意に優しい声がかかり、ハッとして上を見上げた。
優しく笑う若虎は、俺の目をしっかりと見てくれた。
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