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38若虎
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あれ……?
「若虎……耳赤いけど……」
「なっ!!何でもねぇ!!」
顔を隠しているが、耳が真っ赤になっているのがわかる。
どうしてだろう……
寒いのかな?いやいや、そんなはずはない。だって夏だし。
じゃぁ、熱でもあるのかな?うーん…微妙なところだな……。
熱を確かめようと、おデコに手を伸ばした時─
「何、してるの?」
「っ、卯月さん」
突然かけられた声に驚き、俺はバッと手を引っ込めた。
見世の方から来たと思われる卯月さんは、障子の枠に手をかけながら俺と若虎を見ていた。
「……楓、狭間の旦那は帰ったから、座敷を片付けてくれ」
「は、はい」
そういえば、話している途中で鐘の音が9つ聞こえた。それは、9時を回っていることになる。
次の大尽が来る前に片付けなくてはならないので、俺は別館の『花の鳥』に急いだ。
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「若虎、何やってたの?」
「べ、別に何も……」
『何も』と言う割に、顔が全体的に赤いので、卯月は大体のことを考えた。
「…楓が、なにかした?」
「えっ?ぁ、……いや、あの……」
図星らしい。
わたわたと身振り手振りで否定するが、その姿はあまりにもわかり易すぎる。
「……楓、泣いてなかった?」
「え、……全然……」
予想外の質問に、一瞬フリーズした若虎は、直ぐに首を振った。
卯月はホッとした様に目を伏せ、そのまま踵を返した。
「あ、あのっ、」
「若虎、楓が迷惑をかけたね」
若虎がかけようとした言葉を遮って、卯月は言った。
卯月は少しだけ振り返り、それだけ告げると、見世の中に消えていった。
「なんで、卯月さんに────」
卯月の言い方はまるで、『楓は俺の物だ』とでも言うような雰囲気があったことに、若虎は少し苛立ちを覚えた。
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