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アルバイト →side uno
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ケーキの恩義は、やっぱり返さないとな。
ケーキ屋でアルバイトだなんて、恥ずかしくて昔なら断っていただろうけれども、久亀の作るケーキの誘惑に完全に敗北していた。
なにしろ、デコレートが綺麗で甘過ぎず、口の中から身体中が溶けそうなくらいのうまさなのだ。
コンビニの大好きな愛するお口の恋人であるパフェが、霞んでみえるくらいになっている。
地上げ屋への牽制だということはわかってはいるのだが。
路地裏から裏口に回ると、インターホンを押す。
「あ、あのォ、浦嶋っすけど」
インターホンごしに声をかけると、
「ウノスケ君。待ってたよ、今開けるね」
落ち着いた久亀の声に、ちょっとだけ姿勢を正して開いた扉から中に入る。
「あ、こんちは。久亀さん。遅くなったかなと……」
軽く頭をさげると、久亀は俺にキャラメルカラーの可愛いジャケットとシャツとスラックスをてわたす。
「リニューアルしたら、バイトさんを雇って使う予定の制服なんだけど、フリーサイズにしたから、大丈夫だと思うんだ」
にっこりと優しい笑みをこぼしながら、久亀は、そこで着替えてねと、スタッフルームのような部屋に連れてきてくれる。
「え、俺にこんなの…………」
「似合う!僕が保証するからね」
言いかけた言葉に被せて、力強く言われると否定すらできなくなる。
俺は軽く息を吐き出して、学校の制服を脱ぐと、シャツを着直してシックだけど可愛い色合いのジャケットを羽織る。
スラックスを履き直して鏡の前に立つと、俺の厳つい顔もいつもより少しだけ柔らかな顔つきに見えた。
「ね、似合うでしょ」
嬉しそうに、久亀に言われると、なんだか悪い気はしない。
俺の毒気をこの人は全部抜いてくれるようだ。
「さっそく、仕事を教えるからね。僕は結構スパルタだよ」
そう言って爽やかに笑うのも、なんだか俺の目には、輝いて見えた。
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