アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
人質
-
「ウリちゃん!?」
駆け寄ろうとするけれど他の招待客が邪魔になって動けない。
というか邪魔をされているような気がしてならない。
そんななか、その人々をものともせずスイスイと進んでいくのは秋人くん。
神崎くんの前に立つと、おもむろに膝をついた。
「大変ご無沙汰しておりました。本日はお招きいただきありがとうございます、神様」
「あぁ、秋人。来てくれたんだね」
魔族のトップが天界にいることにザワつく天界の貴族達。秋人くんの周りから人が離れ始めたのに乗じて、あたしも神崎くんの方に向かう。
「え、うそ、薬利先生も。お久しぶりです」
「お久しぶり……ってそうじゃないわ。アンタ、あたしを裏切ったわね」
「神様、危険です。離れてください」
詰め寄ろうとすると、ウリちゃんと同じ軍服を着た天使達が神崎くんを守るように間に入った。
「大丈夫だよ、この人たちは」
その天使達も神崎くんは退けてしまう。
「随分と信用されてるんですね、俺たち」
「っはは。そうだね。ここは天界だから下手な真似は出来ないだろうし……。何よりこっちには人質がいる。俺のことをよーく分かってくれてる秋人なら、手を出せない」
紅い顔をそのままに気を失ったように身体を神崎くんに預けているウリちゃん。
その頬をつぅっと指でなぞる。
さっきから思ったけど、なんでこんなに会話は仲良さげなのに空気は殺伐としてるの!?
っていうか神崎くんの”俺のことよくわかってるから”発言ってなに!?
あたしと秋人くんが会う前よね、それ。
2人の訳の分からない関係に混乱する。
ってそうじゃない。
「ウリちゃん!?」
そうよ。今1番危険なのはウリちゃんよ。
医者として、考えなきゃいけないのは、さっき倒れた彼のこと。
だけど、神崎くんは彼をこちらに渡してはくれない。
「なに、してるの?命に関わることだったらどうするのよ」
「大丈夫ですよ。ウリエラくんは今、気持ちよくてその余韻に浸ってるだけですから」
神崎くんの口から出てきた言葉に、耳を疑った。
気持ちよくてその余韻に浸ってるだけ?
もしそれが本当だとしたら、頭おかしいんじゃないの?こんな人がいっぱいいる中で、何をさせてるのよ。
「エル、行こうか」
秋人くんから声がかかる。
「ここで騒ぎを起こしても、俺達が不利になるだけだから」
耳元で囁かれた言葉にハッとする。
あたりを見回してみると、少し離れたところにある人だかりからは、好奇心と畏怖が入り交じったような視線が注がれている。
やっぱりそれは、そんなぶっ飛んだ行動をしてる神崎くんじゃなくて、魔族であるあたし達の方に。
「秋人、控え室の方に行ってて。俺も後で行くよ」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
179 / 238